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仕組み化とは?仕組み化していない問題点と推進の手順を解説

最終更新日:2025年7月18日

毎日の業務で「この作業、いつも○○さんに頼まないと進まない」「前回と同じことをしているのに、なぜか結果が違う」といった経験はありませんか?これらは典型的な「仕組み化不足」のサインです。

仕組み化とは、特定の個人に依存せず、誰でも一定の品質で業務を遂行できる環境を整備することです。しかし、多くの企業では「何から始めればよいかわからない」「効果的な進め方が見えない」といった理由で、仕組み化が進んでいないのが現状です。

本記事では、業務効率化を実現したいあなたに向けて、仕組み化の本質から具体的な実践手順まで、すぐに行動に移せる形で解説します。読み終わる頃には、明日から取り組むべき優先業務とその進め方が明確になり、組織全体の生産性向上への第一歩を踏み出せるでしょう。

【この記事を読んでわかること】

  • 属人化を防ぐ「仕組み化」の定義と5つのメリット
  • 仕組み化不足が引き起こす3つの深刻な経営問題
  • 仕組み化すべき業務と、そうでない業務の見分け方
  • 仕組み化を成功させるための具体的な4つの手順

仕組み化とは何をすること?

「仕組み化」とは、業務から属人性をなくし、担当者や状況によらず常に同じ成果を出せる状態を作り上げることです。個人のスキルに頼っていた業務を、誰もが一定の品質で実行できるプロセスへと転換させます。

例えば、営業報告書の作成を例に見てみましょう。

仕組み化がされていない状態(属人化): 各営業担当者が独自の方法で手書きやバラバラなExcelフォーマットで報告書を作成。内容や品質が人によって大きく異なり、集計や分析に多大な時間を要する状態。

仕組み化がされた状態(標準化・システム化): 統一されたCRMシステムに必要項目を入力するだけで、自動的に標準フォーマットの報告書が生成される。誰が作成しても同じ品質で、データの集計・分析も瞬時に完了する状態。

ただし、いきなり完全な仕組み化を実現することは困難です。まずは現状の業務プロセスを可視化し、標準的な手順を定め、段階的にツール化・システム化を進めていく必要があります。

人の手で行っていた作業を段階的にシステムやツールに置き換えていく、この一連のプロセスこそが「業務の仕組み化」における重要なステップです。仕組み化を成功させるには、まず「なぜその業務が必要なのか」という目的を明確にし、「何をどのような手順で行うのか」を標準化することから始めましょう。

仕組み化を実現するために「ムダ」を知る

仕組み化を成功させるためには、まず業務における「ムダ」を正しく理解することが重要です。多くの組織では、目的は明確でも実行方法が非効率なために、時間と労力が無駄に費やされています。

業務を分析する際は、以下の3つの観点から整理しましょう。

Why(なぜやるのか):業務の根本的な目的やビジョン 

What(何をやるのか):目的達成のための具体的な計画やタスク
How(どうやるのか):計画を遂行するための詳細な手順や手法

実際の業務を観察すると、目的(Why)は適切でも、施策設定(What)や手段(How)が最適化されていないケースが頻繁に見られます。

例えば、「重要な会議資料を作成したい」という目的に対して、毎回ゼロから資料を作り直したり、過去の資料を探すのに時間をかけたりするのは明らかに非効率です。統一されたテンプレートや資料管理システムがあれば、同じ品質の資料をより短時間で作成できるでしょう。

目的は的確であるものの、それを達成するためのプロセスが非効率な状態、そこにこそ、仕組み化によって解消すべき「非効率」というムダが潜んでいるのです。


【TIPS】「7つのムダ」をヒントに業務を見直す

ムダを発見する視点として、製造業で有名なトヨタ生産方式の「7つのムダ」がオフィスワークにも応用できます。自分の業務に当てはまるものがないか確認してみましょう。

  1. 加工のムダ:過剰な装飾の資料作成、不要な項目の入力など。
  2. 在庫のムダ:使われない大量の書類、未処理のメールなど。
  3. 造りすぎのムダ:誰も読まない日報、必要以上の部数の資料コピーなど。
  4. 手待ちのムダ:上司の承認待ち、他部署からの返信待ちなど。
  5. 運搬のムダ:書類を印刷して他部署へ届ける、複数のシステム間でデータを転記するなど。
  6. 動作のムダ:PC内のファイルを探す、必要な情報をあちこちのフォルダから探すなど。
  7. 不良・手直しのムダ:入力ミスによる修正作業、報告書の差し戻し対応など。

こうした非効率な「ムダ」をなくし、生産性の高い業務フローを構築する。それこそが「仕組み化」の重要な役割です。

仕組み化ができていないことによる問題点

注意

仕組み化ができていない組織では、さまざまな問題が発生し、企業の成長を阻害する要因となります。具体的には以下の3つの深刻な問題が挙げられます。

  • 業務の品質が不安定になる 
  • 業務内容が改善しにくい
  • 属人化によるリスクが高まる

それぞれの問題点を詳しく見ていきましょう。

業務の品質が不安定になる

仕組み化されていない業務では、担当者によって作業方法や判断基準が異なるため、必然的に品質にバラツキが生じます。

例えば、顧客からの電話対応において、Aさんは丁寧で詳細な説明をする一方、Bさんは簡潔すぎて不親切に感じられる対応をしてしまう、といったケースがよく見られます。どちらも悪意はないものの、顧客から見ると「担当者によって対応にムラがある」という印象を与えてしまいます。

人間である以上、その日の体調や気分が仕事の品質に影響することは避けられません。しかし、明確な手順や判断基準が整備されていない属人的な業務では、このような個人差がより顕著に現れてしまいます。

品質の不安定さは顧客満足度の低下に直結し、最終的には企業の信頼性やブランド価値を損なう深刻な問題に発展しかねません。一度失った顧客の信頼を取り戻すには、失う時の何倍もの時間と労力が必要になることを考えると、品質の標準化は企業存続に関わる重要な課題と言えるでしょう。

業務内容が改善しにくい

業務が属人化していると、仕事のやり方や判断基準が個人の経験や感覚に依存するため、客観的な評価や分析が困難になります。

例えば、優秀な営業担当者が高い成果を上げていても、その成功要因が「人柄」や「勘」といった曖昧な要素に帰結されてしまい、具体的にどのプロセスが効果的だったのかを特定できません。これでは、成功パターンを組織全体で共有したり、さらなる改善へとつなげたりするのは困難です。

一方、業務が仕組み化されていれば、各プロセスが明確に定義されているため、問題が発生している段階や効率化すべき箇所を客観的に分析可能です。さらに、複数のメンバーが統一された手順で業務にあたることで、多角的な視点からの改善提案を引き出す土壌も生まれます。

継続的な業務改善を実現するには、個人の経験に依存した属人的な業務から脱却し、組織全体で共有できる標準化されたプロセスの構築が不可欠です。

属人化によるリスクが高まる

仕組み化されていない組織では、重要な業務が特定の個人に依存する「属人化」が進行し、深刻な事業リスクを抱えることになります。

「この案件はAさんでないと対応できない」「Bさんが休むと業務が止まってしまう」といった状況は、一見するとその人の能力の高さを示す指標に見えますが、実際には組織の重大な脆弱性を表しています。

属人化が進むと、以下のようなリスクが発生します。

  • 担当者が突然退職や長期休暇を取った場合、その業務が完全にストップしてしまう可能性があります。
  • 特定の業務が一人に集中することで、その担当者の業務量が極端に増加し、過労による体調不良やモチベーション低下を招くケースも少なくありません。
  • 属人化した業務の担当者が組織内で強い発言力を持ってしまうと、健全な組織運営を阻害し、他のメンバーのスキル向上機会を奪う結果にもつながります。

このような属人化リスクを回避するためには、個人に蓄積された知識やノウハウを組織全体で共有できる仕組みを構築することが急務と言えるでしょう。

仕組み化による5つのメリット

仕組み化を適切に実行することで、組織には多くのメリットがもたらされます。これらのメリットは単独で効果を発揮するだけでなく、相互に作用し合って組織全体の成長を促します。

仕組み化による主なメリットは以下の通りです。

  • 人の能力に依存しなくて済む
  • 一定品質を保てる
  • 業務におけるミスを削減できる
  • 業務効率化が進む
  • 会社の資産となり個人と企業の成長につながる

それぞれのメリットについて、具体的に見ていきましょう。これらの効果を理解することで、仕組み化への取り組みがより積極的に進められるはずです。

人の能力に依存しなくて済む

仕組み化の最大のメリットは、特定の個人の能力や経験に頼らずに、組織全体で一定水準の業務遂行が可能になる点です。これは決して人材を軽視することではなく、むしろ人材をより価値の高い業務に集中させるための基盤づくりといえます。

従来、優秀な社員一人がすべてを担っていた業務をマニュアル化・標準化することで、経験の浅いメンバーでも同等の結果を出せるようになります。例えば、ベテラン社員が行っていた複雑な顧客対応も、FAQ集やトークスクリプトを整備すれば、新入社員でも適切な対応が可能になるでしょう。

この取り組みによって、ベテラン社員は日々の基本業務から解放され、戦略立案や新規事業開発、後進の育成といった、より創造的な業務に注力できます。同時に組織は、特定の人材に依存する脆弱性を克服し、予期せぬ人員の変動にも揺るがない事業継続性を手に入れられるのです。

仕組み化によって蓄積されたノウハウは組織の貴重な資産となり、継続的な成長の基盤となるでしょう。

一定品質を保てる

仕組み化により業務手順や判断基準が明確に定められることで、担当者が誰であっても一定水準の品質を維持できるようになります。これは顧客満足度の向上と組織の信頼性構築において不可欠な要素です。

人間は感情や体調の変化に左右される存在であり、同じ人でも日によって仕事の出来に差が生じることは避けられません。しかし、明確な作業手順とチェックリストが整備されていれば、個人的な要因による品質のばらつきを大幅に減らせます。

例えば、コールセンターで標準的な応対マニュアルと品質チェックシートを導入すれば、新人オペレーターでもベテランと同等の顧客対応が可能になります。また、製造現場で作業手順書と品質基準を明文化すれば、作業者が変わっても製品の品質を一定に保てます。

品質が安定することで、やり直し作業や品質チェックにかかる時間と労力が削減され、結果として業務全体の効率化も実現されます。顧客からの信頼獲得と内部プロセスの最適化を同時に達成できるのが、仕組み化による品質安定化の大きな価値と言えるでしょう。

業務におけるミスを削減できる

仕組み化により業務プロセスが標準化されれば、人的ミスを大幅に削減できるようになります。ミスの多くは、手順が明確でない場合や確認体制が不十分な場合に発生するため、これらを仕組み化で解決することが効果的です。

例えば、データ入力作業において、従来は個人の注意力に依存していたものを、入力チェック機能付きのシステムに変更すれば、数値の入力ミスや必須項目の入力漏れを自動的に防げます。また、複数人でのダブルチェック体制を標準プロセスに組み込めば、見落としによるミスも大幅に減らせるでしょう。

さらに肝心なのは、仕組み化されたプロセスではミスが発生した際の原因特定が容易になることです。どの工程で、なぜミスが起きたのかを迅速に把握できるため、根本的な改善策を講じられます。

このような「ミス発生→原因分析→プロセス改善」のサイクルを継続することで、組織全体のミス発生率を限りなくゼロに近づけられます。結果として、手戻り作業や謝罪対応にかかる時間とコストを削減し、顧客満足度の向上にもつながるのです。

業務効率化が進む

仕組み化のメリットには、業務効率の大幅な向上も挙げられます。標準化されたプロセスにより作業スピードが向上するだけでなく、AI技術やシステム導入による自動化も実現しやすくなるでしょう。

従来、手作業で行っていた時間のかかる業務も、仕組み化により段階的に効率化できます。例えば、月次の売上集計業務では、手動計算からExcel関数の活用、さらには販売管理システムによる自動集計へと発展させることで、数日かかっていた作業を数分で終えられるようになります。

また、明確なプロセスが定義されていることで、新しい技術やツールの導入も容易になります。RPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)やAIといった最新技術を効果的に活用するためには、まず業務フローが整理されている必要があるからです。

現在の人手不足が深刻化する社会情勢において、限られた人材でより多くの成果を上げることは企業存続の重要な条件となっています。仕組み化による効率化は、単なるコスト削減にとどまらず、従業員がより創造的で付加価値の高い業務に集中できる環境を作り出し、組織全体の競争力向上に寄与するのです。

会社の資産となり個人と企業の成長につながる

仕組み化により構築されたプロセスやノウハウは、一過性のものではなく、組織の永続的な資産として蓄積されます。この資産は時間の経過とともにその価値を増し、個人と企業双方の継続的な成長を支える基盤となります。

ベテラン社員が長年培ってきた貴重な知識や判断基準も、仕組み化により組織全体で共有できるようになります。例えば、優秀な営業担当者の顧客アプローチ方法をマニュアル化すれば、その人が退職した後も、そのノウハウは組織に残り続け、新入社員の教育に活かせます。

さらに、仕組み化された環境では、個人の成長機会が拡大する点も見逃せません。基本的な業務が標準化されれば、従業員はより高度な課題に挑戦できるようになり、スキルアップの機会が増加します。

同時に、整理された業務プロセスにより新たな改善点も発見しやすくなるため、組織全体の革新も促進されるでしょう。

このような個人の成長と組織改善の好循環により、企業は持続的な競争優位を築けます。一度確立された仕組みは他社が簡単に模倣できない独自の組織資産となり、長期的な事業成功の礎となるのです。

仕組み化を行える業務と行えない業務

天秤でバランスを取ろうとする二つの手。

多くの経営者や管理者が仕組み化に取り組む際、「すべての業務を仕組み化すべき」と考えがちですが、実際には仕組み化に適した業務とそうでない業務が存在します。効果的な仕組み化を実現するためには、まず業務の性質を正しく理解しましょう。

業務は大きく分けて以下の3つのタイプに分類されます。

  • 【仕組み化できる】選択型の業務
  • 【仕組み化できる】単純型の業務
  • 【仕組み化できない】感覚型の業務

これらの特徴を1つずつ詳しく見ていくことで、どの業務を優先的に仕組み化すべきかが明確になります。適切な判断基準を持てれば、限られた時間とリソースを最も効果的に活用し、組織全体の生産性向上につなげられます。

【仕組み化できる】選択型の業務

選択型の業務とは、事前に定義されたルールや条件に基づき、複数の選択肢の中から次に取るべき行動を判断する業務を指します。このタイプの業務は明確な判断基準を設定できるため、仕組み化に非常に適しています。

例えば、顧客からの問い合わせ対応では、「商品に関する質問→商品担当部署へ転送」「クレーム→責任者が対応」「注文変更→受注部署で処理」といったように、問い合わせ内容に応じた対応フローを事前に決めておけば、どのオペレーターでも適切な対応が可能になります。

選択型業務の仕組み化では、フローチャートや決定樹などを活用した判断プロセスの可視化が効果的です。判断基準が明確になれば、経験の浅いスタッフでも迷うことなく適切な選択ができるようになります。

また、このような条件分岐型の業務は、チャットボットやAIシステムによる自動化にも最適です。人間が行っていた判断プロセスをシステムに置き換えることで、24時間対応や処理時間の短縮といったさらなる効率化も実現できるでしょう。

【仕組み化できる】単純型の業務

単純型の業務とは、決められた手順に従って繰り返し行う作業や、明確なルールに基づいて実行される業務のことです。このタイプの業務は仕組み化の効果が最も現れやすく、自動化による大幅な効率向上が期待できます。

具体例として、毎月の売上データをExcelに転記する作業や、定型フォーマットでの報告書作成、在庫数の確認作業などが挙げられます。これらの業務は手順が明確で判断要素が少ないため、マニュアル化すれば誰でも同じ品質で実行できるようになります。

さらに、単純型業務は機械やシステムによる自動化に最も適している領域です。RPAツールを導入すれば、データ入力や転記作業を自動で実行できる上、IoTセンサーを活用すれば在庫管理も自動化可能です。人間が行うよりも正確で高速な処理が実現可能なため、投資対効果が非常に高くなります。

単純型業務の自動化により、従業員はより創造性や判断力が求められる価値の高い業務に集中できるようになります。組織全体の生産性向上と同時に、働きがいの向上にもつながる大切な取り組みと言えるでしょう。

【仕組み化できない】感覚型の業務

感覚型の業務とは、長年の経験にひもづく直感、個人の創造性や感性に深く依存する業務のことです。このタイプの業務は標準化やマニュアル化が困難であり、むしろその人だからこそ生み出せる独自の価値にこそ意味があります。

芸術的なデザイン、経営者の戦略的判断、熟練職人による製品製造、重要顧客との信頼関係構築などがその典型です。これらの業務では、マニュアル通りの手順よりも、その場の状況や相手の反応を敏感に察知した柔軟な対応が求められます。

したがって感覚型業務で肝心なのは、無理に仕組み化するのではなく、担当者が能力を最大限に発揮できる環境を整えることです。周辺の定型業務を徹底的に仕組み化し、組織の競争力の源泉である「その人にしかできない仕事」に集中させる。これこそが、業務を仕組み化する本来の目的と言えるでしょう。

仕組み化を成功させるための推進体制

仕組み化は個人の努力だけで成し遂げられるものではなく、組織的な取り組みが不可欠です。成功のためには、まず仕組み化を推進する体制を整えましょう。

  1. 推進責任者(リーダー)を決める

まず、仕組み化プロジェクト全体を牽引する責任者を任命します。部署を横断して調整を行う必要があるため、ある程度の権限を持つ役職者が望ましいでしょう。

  1. プロジェクトチームを結成する

責任者のもと、各部署から実務担当者を集めてプロジェクトチームを結成します。現場の状況を最もよく知るメンバーが参加することで、実態に即した効果的な仕組みを構築できます。

  1. 経営層のコミットメントを得る

仕組み化には、ツールの導入費用や従業員の工数といったリソースが必要です。経営層に仕組み化の重要性と期待効果を説明し、全社的な協力体制を築くための支援を取り付けましょう。

仕組み化を進める手順

仕組み化を成功させるためには、やみくもに取り組むのではなく、段階的かつ体系的なアプローチが不可欠です。多くの企業が仕組み化で失敗する理由は、適切な手順を踏まずに進めてしまうことにあります。

効果的な仕組み化を実現するための手順は以下の通りです。

  • 【手順1】業務の可視化と課題の把握
  • 【手順2】業務の標準化
  • 【手順3】業務のマニュアル化と自動化
  • 【手順4】PDCAの仕組み化

これらの手順を1つずつ丁寧に実行することで、持続可能で効果的な仕組み化を実現できます。各段階のポイントを理解し、適切に実践すれば、組織変革を成功に導く鍵となるでしょう。

【手順1】業務の可視化と課題の把握

仕組み化の第一歩は、現在行われている業務を正確に把握し、どの業務を優先的に仕組み化すべきかを明確にすることです。多くの組織では業務が属人化しているため、まずは「誰が・何を・どのように行っているか」を可視化する必要があります。

業務を棚卸しする際は、前述した業務タイプの分類を活用します。選択型・単純型の業務は仕組み化に適しており、感覚型の業務は仕組み化よりも人材育成に重点を置くべきです。この分類により、限られたリソースを効果的に配分できます。


【TIPS】業務改善マトリクスで優先順位を決める

どの業務から着手すべきか迷った際は、「効果の大きさ」と「実行の容易さ」の2軸で考える「業務改善マトリクス」が役立ちます。

実行の容易さ:易 実行の容易さ:難
効果:大 ① 最優先領域(Quick Win)
真っ先に取り組むべき業務。小さな労力で大きな成果が期待でき、仕組み化の成功体験を組織に広める起爆剤になります。
(例:定型的な問い合わせ対応のマニュアル化)
② 計画領域
中長期的な視点で計画的に取り組むべき業務。影響は大きいですが、時間やコストがかかります。
(例:基幹システムの刷新)
効果:小 ③ 改善領域
手が空いた時に取り組むと良い業務。手軽にできますが、インパクトは限定的です。
(例:ファイル名の命名規則の統一)
④ 後回し領域
基本的には着手しない、または現状維持とする業務です。

まずは①の領域から着手し、小さな成功(Quick Win)を積み重ねていくことが、全社的な協力を得ながら仕組み化を進めるコツです。


また、業務可視化の過程で必ず発見されるのが「なぜこの作業をしているのか目的が不明」「同じような作業を複数の部署で重複実施」「手順が人によってバラバラ」といった問題です。これらの課題を特定し、改善の必要性と期待効果を明確にすることで、次のステップである標準化作業の方向性が決まります。

現状把握が不十分なまま仕組み化を進めると、本質的でない部分に時間をかけてしまったり、現場の反発を招いたりするリスクがあります。この段階で十分な時間をかけることが、成功の鍵となるのです。

【手順2】業務の標準化

業務の可視化により課題が明確になったら、次は業務プロセスの標準化を行います。標準化とは、業務から属人性をなくし、担当者によらず常に安定した品質を保つためのプロセスです。そのために、作業の手順や判断の基準を明確に定めます。

標準化を進める際は、現在複数の担当者が行っている同じ業務について、それぞれの方法を比較検討し、最も効率的で品質の高い方法を特定します。例えば、顧客への提案資料作成において、Aさんは1時間で高品質な資料を作成し、Bさんは3時間かけて同程度の資料を作成している場合、Aさんの方法を分析し、再現可能な手順として整理します。

標準化においては、「誰でもAさんと同レベルの成果を出せる状態」を常に目指すことが不可欠です。そのためには、Aさんが無意識に行っている判断や工夫を言語化し、明文化する必要があります。

ただし、標準化に対して現場から「やりにくい」「今までの方法の方が良い」といった反発が生じることも少なくありません。このような場合は、なぜ標準化が必要なのか目的を丁寧に説明し、現場の意見も取り入れながら段階的に進めましょう。

また、最初から完璧な標準を作ろうとせず、「まずは70点の標準を作り、運用しながら改善していく」というアプローチが現実的です。完璧を求めすぎると標準化自体が進まなくなってしまうため、実用性を重視した現実的な標準作りを心がけましょう。

【手順3】業務のマニュアル化と自動化

標準化された業務プロセスを、次は誰でも実行できる形に落とし込みます。これがマニュアル化と自動化のステップです。

効果的なマニュアル作成では、文章だけでなく図表やスクリーンショット、動画などを活用して理解しやすさを重視します。中でも、経験者にとっては当たり前でも、初心者にはわからない細かなポイントまで丁寧に記載するよう努めましょう。例えば、「システムにログインする」という一行でも、初心者向けには「ブラウザで〇〇URLにアクセス→IDとパスワードを入力→ログインボタンをクリック」といった具体的な手順が必要になります。

現在では、DocBaseやNotionなどのクラウド型のドキュメント作成ツールを活用することで、更新が容易で検索しやすいデジタルマニュアルを作れます。また、画面録画ツールを使用した動画マニュアルは、複雑な操作手順を直感的に理解できるため、特に効果的です。

並行して進めるべきなのが自動化の検討です。頻度が高く、ルールが明確な業務については、RPAツールやワークフローシステムの導入により大幅な効率化が可能です。ただし、自動化には初期投資と維持管理コストがかかるため、投資対効果を慎重に検討する必要があります。

マニュアル化と自動化を対立する選択肢として捉えるのではなく、段階的な発展として位置づける視点も大切です。まずマニュアル化により業務を標準化し、その後必要に応じて自動化を進めるというアプローチが現実的と言えるでしょう。

【手順4】PDCAの仕組み化

仕組み化の最終段階は、構築した仕組み自体を継続的に改善していくPDCAサイクルの確立です。どんなに優れた仕組みも、時間の経過とともに陳腐化したり、現場の実情と乖離したりするリスクがあるため、定期的な見直しと改善が不可欠なのです。

PDCAサイクルを効果的に回すには、主に3つの仕組みが必要です。

  1. 現場の「声」を集める仕組み

    1つ目は、日々の業務で生まれる「もっとこうすれば良いのに」というアイデアや気づきを、現場の担当者から吸い上げる仕組みです。定期的な意見交換会を開いたり、いつでも提案できる用紙やツールを用意したりするのが効果的です。業務の最前線にいる担当者こそ、問題点や改善のヒントを一番よく知っています。彼らの貴重な声を漏らさず拾い上げることが、改善の第一歩となります。
  2. 提案を「検討し、実行を決める」仕組み

    2つ目は、集まった提案を検討し、実行するかどうかを決めるルールです。すべての提案を一度に実行するのは難しいため、「どれくらい効果があるか」「本当に実現できるか」といった公平な基準で評価し、取り組むべき優先順位を決める手順を明確にしておきます。効果と手間(コスト)を天秤にかける判断基準を設けることが大切です。
  3. 決まった改善策を「全員のルールにする」仕組み

    3つ目は、決まった改善策を正式なマニュアルなどに反映し、関係者全員に知らせる仕組みです。これにより、改善が「決めただけ」で終わるのを防ぎ、組織全体の行動として定着させます。新しいルールの知らせ方、必要に応じた研修の実施、そして全員が理解できたかの確認までをセットで仕組み化することで、改善の効果を確実なものにできます。

このようにPDCAサイクル自体も仕組み化することで、組織の学習能力が継続的に向上し、変化する事業環境に柔軟に対応できる強靭な組織基盤を築けるのです。

要注意!仕組み化でよくある3つの失敗例と対策

意欲的に仕組み化に取り組んでも、思うように進まないケースは少なくありません。よくある失敗例とその対策をご紹介します。仕組み化を実践する際には、参考にしてください。

  • 失敗例1:完璧な仕組みを目指しすぎて進まない
    • 対策: 最初から100点を目指すのではなく、「70点でまず運用してみる」という考え方が重要です。運用しながら改善を繰り返す方が、結果的に早く効果的な仕組みが完成します。
  • 失敗例2:現場の意見を聞かずにトップダウンで進めてしまう
    • 対策: 実際に業務を行うのは現場の従業員です。一方的に新しいルールを押し付けると、反発を招き形骸化してしまいます。必ず現場の意見をヒアリングし、一緒に作り上げる姿勢で進めましょう。
  • 失敗例3:ツールの導入が目的化してしまう
  • 対策: 仕組み化にあたって導入するツールはあくまで手段です。「何のために仕組み化するのか」という目的を常に意識し、ツールに仕事を合わせるのではなく、目的に合わせてツールを使いこなすことが重要です。

仕組み化に欠かせないマニュアルや手順書の作成はDocBaseで

プロジェクトの打ち合わせで成功を祝っている場面

ここまで見てきたように、仕組み化とは「いつ誰がどこで行っても同じ成果を出せる」状態を構築することであり、現代の競争の激しいビジネス環境において不可欠な取り組みです。業務品質の一定化、ヒューマンエラーの削減、そして飛躍的な効率化を同時に実現できる仕組み化は、もはや選択肢ではなく必須の要素と言えるでしょう。

本記事でご紹介した段階的な手順を参考に、まずは頻度が高く重要性の低い業務から着手することをおすすめします。この戦略的なアプローチにより、短期間で目に見える成果を得ながら、組織全体の変革を推進できるはずです。

特に業務マニュアルや手順書の作成においては、専用のツールを活用することで作業がスムーズに進行します。DocBaseなら直感的な操作で高品質なマニュアルや手順書を作成でき、チーム全体での情報共有も効率的に行えます。

実際にDocBaseを活用して仕組み化に成功した企業の事例をいくつかご紹介しますので、明日からでも取り組める仕組み化の第一歩として、ぜひDocBaseの導入をご検討ください。

【業務の仕組み化を目的とした、業務マニュアルや手順書の作成・共有におけるDocBase事例】

DocBaseを活用して業務に必要な手順やルールを標準化し、組織全体の知識レベルを底上げするためのツールとして活用されている事例をご紹介します。特定の個人に依存していた業務を誰でも担えるようにしたり、新人教育の効率を高めたりする効果が得られています。

株式会社GameWith様

  • エンジニアチームでDocBaseを活用し、コーディングガイドラインなどのルールや、アプリケーションのデプロイ方法、サーバー操作などのルーティンワークの手順をDocBaseに掲載しています。
  • 特に複雑な操作手順があるものは、すべてDocBaseに書いておき、次に同じ作業を行う際にはDocBaseを参照すればいい状態にすることで、業務の標準化と効率化を図っています。

事例を読む エンジニア全員が日々の重要な作業を行えるようになりました株式会社GameWith様

オイシックス・ラ・大地株式会社様

  • 社内ルールや便利ツールの使い方など、よく使う情報のリンク集として『ここみて』というメモを作成し、組織図や各種依頼書、システム周りの設定方法などをまとめています。
  • 以前はそれぞれの社内ポータルに情報がわかれていたため、統合のタイミングでDocBaseに社内ポータルの機能を網羅したハブとなるページを作成しました。このメモは重要な情報源として、「ここに行かないと情報が得られない」という認識が浸透しつつあるとのことです。
  • 社内ヘルプデスク業務において、よく来る問い合わせへの対処法をDocBaseに丁寧に記述し、同じ問い合わせが来た際にはそのDocBaseのURLを送ることで、対応の手間を削減し、業務効率を向上させています。スター(いいね!のような称賛機能)が多くつく人気メモとなっているようです。

事例を読む 会議のペーパーレス化が進んで、とても楽になりましたオイシックス・ラ・大地株式会社様

医療法人 風林会様

  • 人事課内でDocBaseをマニュアル作成のメインツールとして使用しています。
  • DocBaseで検索すれば業務が進められるようにマニュアルを作成することを当初からの目的としており、DocBaseを見れば業務マニュアルや過去の採用情報がわかる状態にしています。
  • 作成されたマニュアルは常にアップデートされるため、どのメンバーでも最新の情報を把握でき、チーム内での知識レベルの統一につながっています。
  • 特に、100名を超える新人スタッフへの連絡手段としてDocBaseの外部共有URLを活用しています。以前は一人ずつメールで送っていた集合場所や持ち物などの連絡をDocBaseで行うことで、不特定多数への連絡が格段にしやすくなり、情報の修正も容易になりました。

事例を読む 新人スタッフへの100通超の業務連絡メールを削減「全国にスタッフがいる会社におすすめです」 | DocBase ナレッジ共有・情報共有ツール

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社様

  • 新規サービス開発チームにおいて、DocBaseをさまざまな手順書のポータルとして活用しています。
  • 特に、開発環境構築の手順書をDocBaseに載せていることが具体的な効果として挙げられています。以前は新人の環境構築を教えるのに1〜2日かかっていたのが、DocBaseの手順書の活用により2〜3時間で済むようになったという事例があります。

事例を読む 暗黙知や経験則をドキュメント化する文化が根付き、手戻りや新人教育の時間が激減 | DocBase ナレッジ共有・情報共有ツール

監修

DocBase編集部
DocBase編集部

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