テレワーク導入のコツは目的設定にあり!5つのポイントをご紹介
テレワークを成功に導く最大のコツはなんだと思いますか? それは、テレワークを導入する「目的」を事前に決めておくことです。
企業によっては「社会的な要請があるため」「同業他社が取り組んでいるため」といった、世の中の流れをきっかけにして、テレワークを導入するケースもあるようです。しかしこういったいわば受け身の意識では、テレワークを導入しても普及・活用までには至りません。
テレワークは自社の企業価値を高めるための施策のひとつです。テレワークを導入するにあたっては、企業価値を高めるという最終的なゴールに向かって、能動的に施策を実施していく必要があります。そのためには「何のためにテレワークを導入するのか」――自社なりの目的を定めておくのがポイントとなります。
自社の経営課題を把握して、テレワークを導入することで自社のどんな悩みごと・困りごとが解決されるのか、社員や企業はどんなメリットを享受できるのかをしっかりと具体化させた上でテレワークを導入していきましょう。
本記事では、テレワーク導入に際して主な目的として挙げられる「働き方改革」「生産性向上」「人材確保・育成」「事業継続」「コストダウン」の5つに焦点を当てて、具体的に解説します。
目次
【目的1】働き方改革のため
働き方改革は、より良い働き方を実現すべく政府が推進している取り組みで、「社員の視点に立った多様かつ柔軟な働き方の実現」、「長時間労働の是正」、「単線型キャリアパスの見直し(メンバーシップ型からジョブ型雇用への移行)」といった指針を掲げています(内閣府 働き方改革の実現)。
テレワークはこの働き方改革を実現する施策として挙げられているため、「働き方改革を自社で実践していく」という目的設定と、「自社なりの働き方改革を実現するためにテレワークを導入する」という施策は、理にかなった考え方です。テレワーク導入によって自社の働き方改革を実現していくことで、以下4つのメリットがもたらされます。
1.社員の意識改革
自社で働き方改革を実現するためには、トップダウンの施策に加え、社員自身が業務を改革していく自律性も必要となります。この自律性を育成する点において、テレワークは効果的です。テレワークはオフィスワークと比べると個々の状況が見えにくくなるため、自身の考えや成果を意識的に周囲にしっかりと伝える必要があります。そのため、自ずと主体的に行動する人材の育成につながっていきます。
2. 企業風土の改革
テレワークの導入にはICT活用が不可欠です。ICT活用によって、企業にはDX(デジタル・トランスフォーメーション)がもたらされ、DXの浸透によってコミュニケーションのあり方や仕事の仕方といった企業風土が変革されていきます。
3. ワーク・ライフ・バランスの実現
テレワークを導入すると通勤の必要性がなくなることから、育児や学びのインプット、地域社会への参加などに使える時間が増え、社員がプライベートをより有意義に過ごせるようになります。
4. 長時間労働の削減
日々のタスク管理を社員本人が意識し、上司がしっかりとマネジメントできていれば、決められた時間の中でタスクを終えようとするため、ムダな労働時間の削減につながります(時間外のシステムアクセスを許可しないなどの施策も有効でしょう)。
なおテレワークにおける労働管理は、業務状況が目に見えづらく管理が難しい面もあります。コミュニケーション基盤と信頼関係を十分に構築し、上司が適切な割り振りに配慮してください。
【目的2】生産性向上のため
生産性向上を目的としてテレワークを導入する場合は、以下3点のメリットがもたらされます。
1.集中による知的生産性向上
テレワーク勤務になると電話対応が減るほか、就業中に隣席から話しかけられることがなくなるため、集中しやすく作業効率が高まります。ただし、過集中によってバーンアウトしないように、オフィスワーク時よりも各自が適宜休憩を取る意識を持つ必要があります。
2.迅速な顧客対応
これは営業職における大きなメリットです。テレワークでは在宅勤務だけでなく、モバイルワークも可能となります。出先の移動中のスキマ時間を利用して連絡ややりとりが行えるため、顧客対応のスピードが向上します。こちらについては、セキュリティ対策の意識付けを行いましょう。
3.本社・支社/部署間の柔軟な連携
オフィスワークでは「本社・支社」「部署ごと」といった島意識に縛られてしまい、横の連携が希薄だったり、強すぎる帰属意識がセクショナリズムとなり、対立や隔たりが生まれ、生産性を低下させてしまう場合があります。テレワークを導入すると、ICTによって物理的距離やセクショナリズム(縦割り組織)にとらわれずにコミュニケーションが取りやすくなり、より柔軟な組織づくりが可能となります。
【目的3】人材の確保・育成のため
こちらも3点のメリットがもたらされます。
1.ライフイベントをきっかけにした社員の離職抑制・キャリア継続
介護や出産・育児などのライフイベントにより、居住地を変えたり、働く時間を抑えたりなど、やむをえず離職しなければならない場合があります。しかしテレワークが導入されていれば、こうしたライフイベントが起こっても社員の離職を抑制でき、これまで時間をかけて育成してきた人材を自社に留め、キャリアを継続させていくことが可能です。
2.社員の自立・自己管理能力の向上
従来のオフィスワークと異なり、テレワークでは部下は上司に見られることなく離れた環境で業務を行います。そのため、社員は自分の職務を全うするために、タスク管理やスケジュール管理など、自身のセルフマネジメントに目を向けるようになります。セルフマネジメントをきっかけに、自発的に労働生産性を高める働き方が身に付いていきます。
3. 優秀な人材の獲得
テレワークが実現すれば、居住地を問わずに雇用ができるため、遠隔地の優秀な人材を確保できるようになります。これまで海外や地方へ進出したくてもコスト的にかなわなかった企業が、現地の人材を採用して海外/地方事業を展開することも可能となります。
【目的4】事業継続のため
2020年初頭から世界的に流行を見せている「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)」のような疫病や地震・台風などの災害が起きた際にも事業を継続する施策として、テレワークは有効です。これは「事業継続計画(BCP)」と呼ばれます。
先述のとおり、テレワークによってDXが浸透すると、情報共有・コミュニケーションの基盤が整い、高セキュリティな環境も維持できます。もし事業継続を阻むような事態に陥ったとしても、テレワークでセキュリティリスクを最小限に抑えながら事業を継続させることが可能となります。
【目的5】コストダウンのため
最後の項目になりますが、こちらも3つのメリットが挙げられます。
1.ペーパーレスの推進による紙のコスト削減
紙のドキュメントをコピー・プリントアウトして手渡ししなくても、現在はクラウド上にドキュメントを保存して管理し、必要に応じて複数人での共同編集までできるようなサービスが提供されています。客先ではタブレットで資料を見せながら商談を進めることも可能です。テレワークの導入をきっかけに紙資料を使用する機会が自ずと少なくなり、ペーパーレスによってコストダウンがもたらされます。
2. フリーアドレスなどの施策の併用によるオフィスコストの削減
テレワークによって本社オフィスのフロアを減らし、座席をフリーアドレス制にして誰もが使えるようにすることで、最小限のオフィス機能を維持した上、賃料や光熱費・水道代などが削減可能となります。
3. 通勤コストの削減
オフィスへの出退勤がなくなることで、定期代などの通勤コストが削減されます。
まとめ
テレワークを導入する際、よく挙げられる目的を5つ紹介しました。
- 働き方改革のため
- 生産性向上のため
- 人材確保・育成のため
- 事業継続のため
- コストダウンのため
重要なのは、繰り返しになりますが、「生産性が低いので全社で高めたい」など、テレワークを導入することで自社のどんな課題を解決できるかに着目することです。「テレワークは便利だから/世の中の流れだから」と考えなしに導入することなく、目的をしっかり設定して、その効果と自社の課題とを結びつけて企業価値を高めるテレワークを実践していきましょう。