営業プロセスの基本形とは? 可視化のメリットやポイントも併せて解説
最終更新日:2025年6月20日
顧客との出会いから契約までの道筋を示す「営業プロセス」。近年は、働き方改革や人手不足を背景に、営業プロセスの可視化(見える化)が注目を集めています。個人の経験や勘に頼る営業から、組織として再現性のある営業へと転換を図ることが、企業の成長に欠かせないからです。
しかし、可視化を行うにしても、営業プロセスを漠然と整理するだけでは十分な効果は得られません。成功のカギは、基本となる営業パターンの把握から、具体的な行動指針の設定、そして全社での共有と実践にあります。本記事では、営業プロセスの基本的な考え方から、可視化のメリット、具体的な進め方、ツールの選定方法まで、実践的なポイントをご紹介します。
これらの要素を理解し、自社の状況に合わせて取り入れることで、より効率的で成果の得られる営業活動の実現を目指しましょう。
【この記事を読んでわかること】
- 営業プロセスの基本的な6つのフェーズと各段階での具体的なアクション
- 営業プロセスの可視化がもたらす5つのメリット
- 営業プロセスを成功に導くための4つの注意点
- 自社に合った営業プロセスの作り方とツール選定のポイント
目次
営業プロセスとは?
営業プロセスは、見込み客との出会いから契約までの一連の流れを示すものです。具体的には、初回の訪問から情報提供、ニーズの把握、提案、成約に至るまでの道筋を指します。
営業プロセスはそれぞれの企業や取り扱う商品、サービス、お客様の特徴などによって最適な形が異なります。多くの企業では、営業担当者それぞれが自分なりのやり方で進めているのが現状ではないでしょうか。
営業プロセスと似ている用語として「営業フロー」が挙げられますが、これは主に1つの業務の流れを図で表したものです。一方、営業プロセスは、各部門がどう連携するかや、営業活動の数値なども含めて可視化します。
営業プロセスによって部門間の連携や営業活動の数値が「可視化」されると、組織全体の営業力向上につながります。さらに、明確になった営業プロセスは新人教育やベテランの知識共有を容易にし、組織全体の成長を促進する効果も期待できます。
近年は、少ない人数でより大きな成果を出すことが求められており、営業プロセスの重要性は増しています。自社の特徴に合わせた、効率的な営業プロセスの構築が、営業活動の成果を最大化する近道といえるでしょう。
【参考】営業プロセスと商談プロセスの違い

営業の現場で、「営業プロセス」と「商談プロセス」という言葉をよく耳にしますが、この2つは実は異なるものです。
商談プロセスは、営業プロセスの一部に当たります。例えば、お客様との初回の打ち合わせから見積もり、受注までの流れを指します。一方、営業プロセスは、見込み客を見つけることから始まり、商談を経て、さらにその後のお客様との関係づくりまでを含む、より広い範囲を示します。
この違いを理解することは、とても大切です。なぜなら、営業の改善を考えるとき、商談プロセスだけに目を向けていると、営業活動全体の効果を高められないからです。
たとえば、商談の成功率を上げることばかりに注目すると、その前段階の見込み客の選び方や、成約後のフォローアップなど、重要な要素を見落としてしまう可能性があります。
効果的な営業活動を実現するためには、営業プロセス全体を見渡し、それぞれの段階でどのような取り組みが必要かを考えることが重要です。
営業プロセスの可視化が重要な理由
これまで多くの企業では、営業のやり方は個々の担当者の経験や勘に任せられてきました。ベテラン営業マンの「何となく上手くいく」というスキルが重宝されてきた時代です。
しかし、近年の働き方改革や人手不足の流れを受けて、状況は大きく変わってきています。多くの企業が、限られた人数で、これまで以上の成果を上げなければならないという課題に直面しています。このような状況で、個々の能力や経験だけに依存した属人的な営業スタイルでは、組織全体の生産性を安定的に向上させることは困難です。
そこで重要になるのが、営業プロセスの「可視化」です。営業プロセスを可視化することで、どこにボトルネックがあり、どのような活動が成果に繋がっているのかを客観的に把握できます。非効率な部分を改善したり、成功しているやり方を組織全体で共有・実践したりすることが可能になり、限られたリソースでも高い成果を目指せるようになるため、営業プロセスの可視化の必要性が高まっているのです。
営業プロセスの可視化により、いくつもの利点が生まれます。まず、自社の営業活動のどこに課題があるのかが明確になります。また、成功のパターンを数値で把握できるため、それを組織全体で共有し、再現することが可能になります。
同様に、なぜ失敗したのかという原因も数値やデータで確認できるため、同じ失敗を繰り返すリスクの軽減にもつながります。
つまり、営業プロセスの可視化は、「当たり前のことを、当たり前にできる」組織づくりの第一歩。個人の能力に頼りすぎない、再現性と拡張性のある安定した営業体制を築けるようになるのです。
営業プロセスを可視化するメリット

営業プロセスを可視化することは、組織にさまざまなメリットをもたらします。具体的には以下の5つのポイントが挙げられます。
- 課題やボトルネックの発見
- 効率的な人材育成の実現
- ノウハウの共有と標準化
- より適正な人事評価の実現
- 進捗状況の明確化
これらのメリットは、それぞれが独立したものではなく、相互に関連し合って組織全体の営業力向上に貢献します。例えば、課題が見つかれば人材育成に活かせ、ノウハウの共有は進捗管理の改善につながります。
注目すべきは、これらのメリットが短期的な成果だけでなく、中長期的な組織の成長にも大きく影響するという点です。
ここからは、それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。5つのポイントを理解することで、自社に合った可視化の方法を見つけられ、さらには営業チーム全体のレベルアップにもつながっていきます。
課題やボトルネックを発見できる
営業の現場でよく聞く悩みに「なぜ成果が上がらないのかわからない」というものがあります。特に、営業ノウハウが個人に依存している組織では、この問題が深刻です。
この状況を大きく改善する策として、営業プロセスの可視化が有効です。例えば、「初回の商談は取れるのに、次の段階に進めない」といった具体的な課題が見えてきます。つまり、どの段階でつまずいているのかが明確になるのです。
また、チームの中で誰がどんな部分で苦労しているのかも早い段階で把握できます。適切なタイミングでのサポートが可能になり、問題が大きくなる前に対策を打てます。
特に効果的なのは、数値による管理です。「なんとなく調子が悪い」という感覚的な問題把握から、「この工程で○○%の確率で止まっている」という具体的な分析も可能になります。
このように、営業プロセスの可視化は、問題解決のスピードアップと的確な対策立案を可能にします。結果として、組織全体の営業力向上につながっていくのです。
効率的に人材育成できる
営業の世界では「人材育成に時間がかかる」という課題も見られます。しかし、営業プロセスを可視化することで、この課題を効率的に解決できます。
最も大きな効果が表れるのは、新人教育の場面です。社内で営業の共通基準があれば、新人は「何をすべきか」「どう進めるべきか」を明確に理解できます。従来よりも短期間での戦力化が可能になります。
また、すでに現場で活躍している営業担当者にとっても、大きなメリットがあります。例えば、成績が伸び悩んでいるメンバーも、標準化された営業プロセスに沿って活動することで、着実に成果を得られるようになります。
さらに、チーム内でお互いの営業手法について意見を交換しやすくなるというメリットもあるでしょう。「あの場面ではこうすると上手くいく」といった具体的なアドバイスが飛び交うようになり、自然と相互学習の環境が生まれます。
ノウハウを共有し営業活動を標準化できる
「できる営業マン」の知識やコツが、その人だけのものになっていませんか?このような状態を「ノウハウの属人化」と呼びます。これは組織にとって大きなリスクとなります。
そこで有効なのが、営業プロセスの可視化です。これにより個人の成功パターンを組織全体で共有し、一定のレベル(標準)を目指せるようになります。 ただし、ここでの「標準化」が意味するのは、メンバー全員の行動を画一的に縛ることではありません。「最低でもここまでは達成すべき」という共通の基準を設けることです。
例えば、お客様との初回面談で必ず確認すべき項目や、提案資料に盛り込むべき要素などを定めることで、誰でも一定水準の営業活動ができるようになります。
さらに心強いのは、チーム全員の知識や経験を活かせる点です。ベテランだけでなく、若手の新しい視点も取り入れることで、営業プロセス自体も進化していきます。
このように、ノウハウを「みんなの財産」にすることで、組織全体の営業力が高まっていくのです。個人の力量に頼りすぎない、強い営業組織づくりにつながります。
人事評価がより適正になる
営業の評価といえば、売上や成約件数だけで判断されがちです。しかし、この方法では個々の努力や工夫が見えにくく、時にはモチベーション低下を招く可能性もあります。
営業プロセスを可視化すると、各担当者がどのように仕事を進めているのかが明確になります。例えば、「見込み客の発掘は上手だが、商談の進め方に課題がある」といった具体的な特徴が見えてくるのです。
こうした可視化により、例えば、新規開拓のための地道な活動や、お客様との関係づくりへの取り組みなど、数字だけではわからない部分も評価できるようになります。
また、営業担当者自身も自分の強みや改善点がわかりやすくなります。「次は何を学ぶべきか」「どこを改善すれば成果につながるか」といった具体的な課題が見えてくるのです。
このように、営業プロセスの可視化は、より公平で建設的な評価システムの構築につながります。結果として、社員の成長意欲を高め、組織全体の底上げにも貢献するのです。
進捗状況が明確化される
営業活動では、いつ、どの段階で、どんな状況なのかを正確に把握することが重要です。営業プロセスを可視化すると、この進捗管理が格段に楽になります。
例えば、「現在の商談が次のステップに進むにはどうすればよいか」「目標達成までに何が必要か」といった具体的な道筋が見えてきます。また、短期的な課題だけでなく、中長期の目標に向けた計画も立てやすくなります。
特に効果的なのは、リアルタイムでの状況把握です。誰が、いつ、どんな活動をして、お客様からどんな反応があったのか。これらの情報をタイムリーに共有することで、早め早めの対策が打てます。
また、各ステップの関連性もわかりやすくなります。「この段階での丁寧なヒアリングが、後の提案の質を高める」といった因果関係が明確になり、より戦略的な営業活動が可能になります。
このように、営業プロセスの可視化は、「やみくもな営業」から「戦略的な営業」への転換を後押しします。結果として、より効率的で成果の上がる営業活動が実現できるのです。
営業プロセス基本の6フェーズ

効果的な営業活動を実現するには、基本となる6つのフェーズを理解することが大切です。これらのフェーズを押さえていれば、より戦略的な営業活動が可能になります。
営業プロセスの6つの基本フェーズは以下の通りです:
- 見込み客の選定・獲得
- 初期コンタクト
- ニーズ把握と提案
- クロージング
- 受注処理
- フォローアップ
これらのフェーズは、順を追って進んでいくものですが、状況に応じて柔軟に対応することも必要です。各フェーズには明確な目的があり、それぞれが次のステップにつながっています。
では、各フェーズについて詳しく見ていきましょう。それぞれの段階で何をすべきか、どんなポイントに気をつけるべきかを理解することで、より効果的な営業活動が実現できます。
見込み客の選定・獲得
営業プロセスの第一歩は、商品やサービスに興味を持ってくれそうな見込み客を見つけることから始まります。この最初の活動は「リードジェネレーション」とも呼ばれ、その後の営業活動の成否を左右する重要な段階です。
見込み客の獲得には、オンラインとオフラインの手法があります。ウェブサイトやメルマガなどのデジタル施策から、展示会への出展や紹介営業まで、さまざまな方法を活用できます。
ポイントとなるのは、見込み客の分析です。例えば、「すぐに商談できそうな層」「情報収集の段階の層」といった、購買意欲や商談の進み具体によって見込み客を分けることで、それぞれに適した対応が可能になります。
また、このフェーズでは数値による管理が特に重要です。「どの種類の見込み客が何件いるのか」「どの見込み客に対していつアプローチするのか」といった情報を明確にし、共有することで、チーム全体で効率的な活動ができます。
見込み客の質と量の両方を意識しながら、継続的な顧客獲得の仕組みを作ることが、安定した営業成果につながります。
コンタクトを行う
見込み客を特定したら、次は初めてのコンタクトを行うステップです。このフェーズでは、名刺交換やウェブからの問い合わせなどをきっかけに、見込み客とコミュニケーションを始めます。
コンタクトの手段は多様です。電話やメール、SNSのメッセージ、直接訪問など、状況に応じて最適な方法を選びます。大切なのは、見込み客のニーズや課題に耳を傾けながら、今後の関係構築の方向性を見極めることです。
このフェーズでは、以下の項目を必ず記録に残すようにしましょう:
- いつ、どんな手段で連絡したか
- 何回アプローチしたか
- ヒアリングでどんな情報が得られたか
また、連絡が取れない場合の代替プランや、次の商談フェーズに進むための判断基準なども、あらかじめ決めておくと良いでしょう。スムーズな営業プロセスの進行が可能になります。
最初のコンタクトは、その後の関係性を左右する重要な機会です。丁寧かつ戦略的なアプローチを心がけましょう。
商談を通してニーズを把握し提案する
商談のフェーズでは、見込み客との対話を通じて具体的な情報を集め、適切な提案につなげていきます。このステップは、成約への重要な橋渡しとなります。
効果的な商談の進め方は以下の順です:
- ニーズの詳細把握
- 解決策の提案
- 商品・サービスのメリット説明
商談では、次の情報を必ず確認しましょう:
- 具体的なニーズ
- 予算の範囲
- 購入に対する意欲
- 決定までのスケジュール
また、各段階で達成すべき目標を明確にし、次のステップに進める条件も明確にしておくことが大切です。これらの情報は必ず数値化し、データとして蓄積していきましょう。
提案する際のポイントは、見込み客の課題に対する具体的な解決策の提示です。製品やサービスの特徴だけでなく、それによってどんな価値が生まれるのかをわかりやすく伝えることを心がけましょう。
クロージングを行う
クロージングは、商談を成約につなげる重要なフェーズです。ここでは、見込み客との最終的な条件交渉を行い、契約締結を目指します。
クロージングは、以下の3つのステップで進めます:
- テストクロージング
→ 商談の途中で購入意欲を確認
- 本クロージング
→ 契約に向けた具体的な提案と交渉
- 契約締結
→ 最終合意と契約書の取り交わし
特に重要なのが「テストクロージング」です。成約の可能性が高い案件に注力するために、商談の途中で「もし導入するとしたら、いつ頃をお考えでしょうか?」といった質問を投げかけ、購入意欲を確認します。
また、最終段階で契約が白紙になるリスクを防ぐため、以下の点に注意を払いましょう:
- 決裁者の確認
- 社内承認プロセスの把握
- 予算の確保状況の確認
見込み客との信頼関係を大切にしながら、適切なタイミングで成約に結びつけることがポイントです。
受注処理を行う
成約後の受注処理は、顧客との長期的な関係を築く上で重要なフェーズです。この段階での丁寧な対応が、その後の取引を円滑にします。
受注処理での主な業務は次の4ステップです:
- 契約書類の処理
- 今後の流れの説明
- 担当窓口や体制の確認
- 社内の関連部門への引き継ぎ
特に注意すべきは、「経理部門への入金情報の連携」「導入支援チームへの顧客ニーズの伝達」「カスタマーサポートへの申し送り」といった社内での情報共有です。
これらの情報は、リアルタイムでシームレスに共有できる仕組みを整えることが大切です。情報の途切れや遅れは、顧客満足度の低下につながる可能性があります。
受注処理は地味な作業に見えますが、実は顧客との信頼関係を深める重要な機会です。正確かつスピーディーな対応を心がけましょう。
顧客へのフォローアップ
契約締結後のフォローアップは、顧客との関係を深め、長期的な取引につなげるための重要なフェーズです。特にサブスクリプション型のビジネスでは、このステップが売上の安定化に直結します。
効果的なフォローアップには以下の要素が含まれます:
- 定期的なコミュニケーション
・利用状況の確認
・困りごとの把握
・新しい情報の提供
- 顧客満足度の計測
・製品やサービスの活用度
・目標達成の進捗状況
・改善要望の収集
- 追加提案の検討
・アップセルの機会発見
・クロスセルの可能性確認
・新サービスの案内
フォローアップでは、数値による管理も重要です。例えば、製品の使用頻度や顧客満足度などを定期的に測定し、必要に応じて支援策を講じることで、契約更新率の向上に結びつきます。
親密な関係を築きながらも、ビジネスとしての価値を提供し続けることが、良好な取引関係の維持につながります。
営業プロセスを可視化するステップ

営業プロセスの可視化は、計画的に進めることで効果的な結果が得られます。ここでは、可視化を実現するための3つの重要なステップを紹介します。
- 基準となる営業パターンの整理
- プロセスのシンプル化
- 各プロセスにおける具体的行動の設定
これらのステップを順序立てて進めることで、実用的で効果的な営業プロセスの可視化が実現可能です。
重要なのは、一度に完璧を目指すのではなく、段階的に改善していく姿勢です。まずは基本的な形を作り、実践しながら少しずつ調整していくアプローチが望ましいでしょう。
では、それぞれのステップについて、具体的に見ていきましょう。各ステップでの注意点や実践のポイントを理解することで、より確実な可視化を進められます。
基準となる営業パターンからプロセスを整理する
営業プロセスを可視化する第一歩は、最も基本的な営業パターンを見つけること。多くの企業では、各営業担当による、さまざまな営業スタイルが混在していますが、まずは最も成功率の高い標準的なパターンを整理するところから始めましょう。
その際に気をつけたいのは、例外的なケースに過剰に捉われないことです。「こんな場合もある」と考えすぎると、返って使いづらいプロセスになってしまいます。むしろ、日常的によく発生する状況に焦点を当て、再現性の高いプロセスを見つけ出すことが大切です。
例えば、成約率の高い営業担当者の行動を観察し、共通する要素を抽出するのも効果的です。ベテラン社員の経験則を形にすることで、組織全体で活用できる基準が生まれます。
このように、実践で効果が実証されている営業プロセスを基準化すれば、現場との親和性が高く、実用的な営業プロセスを構築することができます。
営業プロセスをシンプル化する
営業プロセスの可視化において、多くの企業が陥りやすい失敗は、プロセスを必要以上に複雑にしてしまうことです。細かく分類しすぎたり、例外的なケースまで盛り込もうとしたりすると、逆に全体像が捉えにくくなってしまいます。
シンプルな営業プロセスには、いくつもの利点があります。まず、チーム全体で共有しやすくなります。また、分析にかかる時間も短縮でき、改善点の発見も容易になります。複雑なプロセスは、せっかくの可視化が形骸化してしまう恐れもあるといえるでしょう。
大切なのは、「必要なことを、必要なだけ」という視点です。例えば、商談の重要な転換点や、結果を左右する判断ポイントなど、本当に押さえるべきポイントに焦点を当てましょう。
シンプルさを意識した整理を行うことで、実際の現場で活用しやすい、実践的な営業プロセスが完成します。
各営業プロセスにおける行動を具体化する
営業プロセスの全体の流れを把握したら、次は各ステップで「何をするべきか」を明確に定義していく必要があります。同じ「初回訪問」という工程でも、営業担当者によって認識が大きく異なることがあります。
例えば、ある担当者は製品カタログを手渡して簡単な説明で終わらせるのに対し、別の担当者は製品デモを行い、さらに顧客の課題まで深掘りするかもしれません。このような認識のズレは、最終的な成果の差となって表れてしまいます。
そこで重要なのが、各プロセスでの標準的な行動を具体的に定めることです。「初回訪問では、会社概要の説明、製品紹介、課題のヒアリングまでを行う」といった具合です。
ただし、行動の定義があまりに細かすぎると、営業担当者の創意工夫の余地が失われてしまいます。基本となる枠組みを示しつつ、個々の持ち味も活かせるバランスを心がけましょう。
営業プロセスを可視化する際の注意点

営業プロセスの可視化は、組織の成長に向けた重要な取り組みです。しかし、ただ始めるだけでは効果が限られてしまう可能性があります。ここでは、営業プロセスの可視化を成功に導くために、押さえておきたいポイントをご紹介します。
以下の4つが、営業プロセスを可視化する際の注意点です。
- 営業プロセスの標準化と遵守
- KPIの設定
- 適切なツールの選定と導入
- 関係者の理解と協力の獲得
それぞれのポイントには、押さえるべき細かな要素があります。順を追って見ていくことで、自社に合った可視化の進め方が見えてきます。各ポイントについて詳しく解説していきましょう。
営業プロセスは標準化し遵守を心がける
営業プロセスの可視化において、最も重要なのは組織全体で一貫した基準を持ち、それを継続的に実践することです。個人の経験や勘に頼る営業から、組織として再現性のある営業へと転換を図るのです。
標準化とは、初回アプローチからクロージングまで、各段階での基本的な行動指針を定めることです。例えば、商談時の必須確認事項や、提案書に盛り込むべき要素などを明確にします。経験の浅い担当者でも一定水準の営業活動が可能になります。
また、設定した基準を組織全体に浸透させるには、定期的な研修や振り返りの機会が欠かせません。データの一貫性を保ち、正確な分析や改善につなげるためにも、全員が基準を理解し、それに沿って行動することが重要です。
ただし、これは個々の営業担当者の創意工夫を否定するものではありません。基本となる枠組みを示しつつ、それぞれの強みを活かせる余地を残しておくことが大切です。
KPIを設定する
営業プロセスの効果を測定し、継続的な改善を図るには、適切なKPI(重要業績評価指標)の設定が不可欠です。具体的な数値目標があることで、チームの方向性が明確になり、個々の努力が成果につながりやすくなります。
営業における効果的なKPIには、以下のようなものが挙げられます。
- 新規リード獲得数
- 商談実施件数
- 提案書提出数
- 成約率
- 各フェーズ間の移行率(例:リード→商談化率、商談→受注率)
- 平均商談単価
- 営業サイクル(リード獲得から受注までの期間)
- リードへの初回コンタクト時間
これらの指標は、測定可能で、かつ達成可能な目標である必要があります。また、チーム全体で共有しやすく、定期的な見直しが可能な指標を選びましょう。
ただし、数値を追うことが目的化してしまわないよう注意が必要です。例えば、商談件数だけを重視すると、質の低い商談が増える可能性があります。そのため、定期的に指標の有効性を検証した上での、必要に応じた見直しが大切です。
KPIは、チームの成長を支援するツールとして上手に活用しましょう。
必要に応じて適切なツールを選定し導入する
営業プロセスの可視化において、自社の営業活動に合ったデジタルツールの導入も有効です。多くの企業ではCRMやSFAといったツールが活用されています。これらのツールは、顧客情報、商談履歴、各フェーズの進捗状況を一元管理し、リアルタイムで可視化するのに役立ちます。
ツールを選ぶ際は、顧客管理や営業活動の追跡といった機能は、基本的な要件として押さえておきましょう。また、データを1カ所で管理できる仕組みがあれば、情報の一貫性を保ちやすく、正確な分析にもつながります。
ただし、「機能の充実=ベストな選択」とは限りません。むしろ、シンプルで使いやすいツールのほうが、チーム全体に定着しやすい傾向にあります。複雑なツールは、せっかく導入しても使われなくなってしまう可能性があるためです。
理想的なのは、必要な機能を備えつつ、直感的に操作できるツールです。導入前に無料トライアルなどを活用し、実際に使ってみることをおすすめします。チームの意見も取り入れながら、自社に最適なツールを見つけていきましょう。
関係者の理解・協力を得ておく
営業プロセスの可視化を進める上で、忘れてはならないのがチーム全体の理解と協力です。いくら優れた仕組みを導入しても、メンバーの協力が得られなければ、期待する成果は得られません。
まずは、営業プロセスの可視化に取り組む目的やメリットの丁寧な説明から始めましょう。例えば、情報共有が進むことで、チームの連携が深まり、顧客対応の質が上がることなどです。具体例を交えて伝えれば、理解が深まりやすくなります。
また、新しいツールを導入する際は、使い方の研修が必須です。特に初期段階では、不明点を気軽に聞ける雰囲気づくりを心がけましょう。定期的にメンバーの声を集め、改善につなげれば、より使いやすい仕組みへと進化させられます。
このように、全メンバーが協力して取り組む姿勢を持つことで、営業プロセスの可視化がより効果的なものとなり、組織全体の成果向上につながっていきます。互いの成長を喜び合える組織文化を育てながら、一歩ずつ前に進んでいきましょう。
可視化を進める上での「よくある失敗」とその回避策
前段で営業プロセスを可視化する際の注意点を解説してきましたが、これらのポイントを押さえないと、せっかくの取り組みが形骸化してしまう可能性があります。ここでは、多くの企業が陥りがちな「よくある失敗例」とその回避策をまとめます。
失敗例 | 内容 | 回避策 |
プロセスを細かく定義しすぎる | 例外的なケースまで網羅しようとして、プロセスが複雑になりすぎてしまい、現場で使いこなせない、形骸化する。 | まずは最も重要かつ基本的な流れ(基幹プロセス)に絞ってシンプルに定義し、運用しながら必要に応じて改善していく。(参照: 営業プロセスをシンプル化する) |
現場の意見を聞かずにトップダウンで決めてしまう | 経営層や管理職だけでプロセスを設計し、現場の実態に合わない、あるいは納得感が得られず、結局使われない。 | 必ず現場の営業担当者を巻き込み、意見交換をしながら一緒にプロセスを作り上げる。関係者の理解と協力を得ることが不可欠。(参照:関係者の理解・協力を得ておく) |
ツール導入が目的化してしまう | プロセス定義や運用ルールが曖昧なまま高機能なツール(CRM/SFAなど)を導入し、うまく活用できずに定着しない。 | まず自社の営業プロセスを明確にし、その上でプロセス実行を支援する「手段」として適切なツールを選定・導入する。(参照: 必要に応じて適切なツールを選定し導入する) |
一度作ったら見直さない | 市場環境や顧客ニーズの変化、組織変更などに対応せず、古いプロセスを使い続けてしまい、効果が薄れる。 | 定期的に(例:四半期ごと)プロセスの有効性やKPIの達成状況をレビューし、継続的に改善・更新する仕組みを作る。(参照: KPIを設定する) |
営業プロセスを成功させるための実践フレームワークとTIPS
営業プロセスの可視化と改善をさらに効果的に進めるために役立つ、代表的なフレームワークと実践的なTIPSをご紹介します。
役立つフレームワーク
フレームワーク名 | 概要 | 活用 |
営業パイプライン / セールスファネル | 見込み客の発見から受注に至るまでの各段階(フェーズ)を可視化する考え方です。記事で紹介した6つのフェーズもこの考えに基づいています。 | 各フェーズに存在する案件数や金額、フェーズ間の移行率を把握することで、将来の売上予測やボトルネックとなっている箇所の特定に役立ちます。「リードから商談への移行率が低い」「クロージングフェーズでの停滞が多い」といった課題発見につながります。 |
BANT条件 | 商談の初期段階で、見込み客の質や優先度を見極めるためのフレームワークです。Budget(予算)、Authority(決裁権)、Needs(必要性)、Timeline(導入時期)の頭文字を取っています。 | 特にフェーズ1(見込み客の選定・獲得)やフェーズ3(ニーズ把握と提案)において、これらの情報をヒアリングすることで、有望な見込み客にリソースを集中させることができます。 |
SMARTの法則 | 目標設定(特にKPI設定)を効果的に行うためのフレームワークです。Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性がある)、Time-bound(期限がある)の頭文字です。 | 「KPIを設定する」際にこの法則を用いることで、「いつまでに(Time-bound)」「どの指標を(Specific, Measurable)」「どれくらい達成するのか(Achievable)」といった、具体的で行動につながる目標を設定できます。 |
実践的なTIPS
Tips 1: 現場を巻き込んで一緒に作る: 営業プロセス設計はトップダウンではなく、必ず現場の営業担当者の意見を取り入れ、共に作り上げましょう。現場の実態に即していないプロセスは活用されません。
Tips 2: シンプルに始めて継続的に改善する: 最初から完璧を目指さず、最も重要な営業プロセスから着手し、スモールスタートを心がけましょう。運用しながらフィードバックを得て、段階的に改善していく方が現実的です。
Tips 3: 定期的なレビューと更新を仕組み化する: 市場や顧客は常に変化します。定義した営業プロセスやKPIが現状に合っているか、定期的に(例:四半期ごと)見直し、改善するサイクルを確立しましょう。
Tips 4: ツールと営業プロセスを連携させる: CRM/SFAなどのツールを導入する場合、ツールの設定(商談フェーズなど)と定義した営業プロセスを必ず一致させましょう。乖離があると正確なデータ分析ができません。
Tips 5: ドキュメント化していつでも参照可能にする: 定義した営業プロセス、KPI、行動指針、関連資料などは、誰もがいつでもアクセスできる場所にドキュメントとしてまとめ、共有しましょう(例:社内Wiki、ナレッジベース)。
これらのフレームワークやTIPSを参考に、自社の状況に合わせて営業プロセスの可視化と改善に取り組んでみてください。
情報の一元管理ならDocBaseがおすすめ

これまで見てきたように、営業プロセスの可視化は、組織の営業力を高めるための重要な取り組みです。個人の経験や勘に頼る従来の営業スタイルから、組織全体で共有・実践できる体系的なアプローチへと転換することで、より安定した成果が見込めます。
成功のポイントは、以下の3つです:
- シンプルで実践的なプロセスの設計
- チーム全体での理解と協力
- 適切なツールの活用
特に、情報の一元管理は重要な要素となります。多くの企業では顧客情報や商談進捗の管理にCRMやSFAツールが活用されますが、定義した営業プロセスそのものの詳細、各フェーズでの具体的な行動指針、成功事例、トークスクリプトといった「生きたノウハウ」の共有・蓄積においては、例えば、DocBaseのようなナレッジ管理ツールを活用することが効果的です。営業プロセスの標準化やノウハウの共有をスムーズに進められます。
【公式サイト】
【参考】
社内の情報共有に最適! DocBaseが全社でストレスなく使える6つの理由
営業プロセスの改革は、一朝一夕には実現できません。しかし、本記事で紹介した基本的な考え方とステップを参考に、自社の状況に合わせて少しずつ改善を重ねていくことで、必ず成果につながっていくはずです。まずは小さな一歩から、組織全体の営業力向上を目指してみましょう。
【営業プロセスの効率化に関するDocBaseの活用事例】
活用事例 | 企業名 | 具体的な内容・効果 | 事例ページ |
顧客対応における情報参照の効率化 | 株式会社シナジーマーケティング様 | 営業が顧客対応時にDocBaseで製品機能を確認。エンジニアへの質問が不要になり、迅速かつ正確な情報提供が可能に。 | 気軽に投稿できるので、思っていることを声に出しやすくなりましたシナジーマーケティング株式会社様 |
営業ノウハウや成功事例の共有 | 株式会社マンションマーケット様 | 議事録に「誰が、何を、いつ、成功/失敗」を記録・共有。チーム全体でノウハウを共有し、失敗の繰り返しを防ぐ。 | 社内インフルエンサーを選定して、他のメンバーの投稿を促しました株式会社マンションマーケット様 |
新規メンバーへの情報伝達の迅速化 | 新メンバーにDocBaseのメモを提示するだけで情報共有が完了し、時間節約になる。 | ||
商品情報のデジタル化と迅速な案内 | 株式会社アールキューブ様 | 紙ベースの商品情報をDocBaseに移行。不明点を検索し顧客に迅速に案内可能に。新商品案内のURLシートとしても活用。 | アールキューブ版ウィキペディアをDocBaseで作成 〜検索すればなんでも分かる |
営業と他部署間の連携強化 | 株式会社インフラトップ様 | 営業からの依頼内容をDocBaseにメモすることで、エンジニアとの行き違いを防止。 | 【事例】『DocBaseに投稿することがかっこいい』という風土を作りました |
部門を超えたナレッジの横展開 | 株式会社マイナビ様 | DocBaseの公開範囲変更だけで、特定案件のナレッジを他部署へ簡単に共有。営業の知見を他部門で活用。 | 部署を越えてナレッジを横展開できるようになりました | DocBase ナレッジ共有・情報共有ツール |
非エンジニアの営業担当者による情報共有 | 株式会社GameWith様 | マークダウンヘルパーボタンが非エンジニアにも好評で、抵抗なく情報共有に参加。 | エンジニア全員が日々の重要な作業を行えるようになりました株式会社GameWith様 |