テレワークの環境を改善するために見直すべき3つのポイント
2019年4月から施行された働き方改革関連法、そして2020年初頭に世界的な広まりを見せたCOVID-19(コロナウイルス感染症)。これら2つが契機となり、社員がオフィス以外で働くという新しい勤務形態のテレワークが本格的に普及を見せています。
しかし、特に後者は社会要請を受けての突貫工事的な状況下で導入され、多くの企業において十分な事前準備を行えなかったことから、徐々に問題が目立つようになってきました。
同年6月には緊急事態宣言が解除され、テレワーク導入の要請に関しては一時的な落ち着きを見せましたが、働き方改革推進の観点を踏まえるとテレワークは今後も浸透していくことが予測され、よりテレワークが実践しやすい環境へと改善が求められています。
そこで本記事では、テレワークの環境を改善するためのポイントを「コミュニケーション」「管理業務」「働く環境」の3つに大きく分けて俯瞰的に解説していきます。
目次
コミュニケーション環境を改善すること
現状の自宅でのテレワークにおける課題として、コミュニケーション不全が挙げられます。
コミュニケーション不全は、例えば指示が伝わりにくく業務効率が低下したり、雑談がなくなることから社員が疎外感を覚えたり、業務プロセスが見えづらくなったりといった状況をつくり出し、社員が業務に対して不安を持つ要因となります。自宅でのテレワークにおいては、従来のオフィス勤務と同じ水準までコミュニケーションレベルを高めて、業務に安心して取り組める状況を実現することが重要となってきます。
このテレワークにおけるコミュニケーションの鍵を握るのが、「ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)」ツールを活用したコミュニケーションツールの導入です。例えばSlackやチャットワークなどのテキストチャットツール、ZoomやMicrosoft Teamsなどのビデオチャットツールなどが挙げられます。
昨今ではこれらのICTツールを導入すること自体にさほど難しいノウハウは必要ありません。ですが、ツールによって活用できる情報に得手不得手があるため、各ツールの特性をきちんと理解した上でうまく使い分けることが重要です。例えば、業務指示がテキストや音声のみで不十分な場合は画面共有を行って視覚的な補完を加えたり、社員の状況を把握する際にはテキストだけでなく表情が分かるビデオチャットを用いたりなどといった使い方です。
なお、ICTツールを導入する際はセキュリティリスクを把握し、改善する必要もあります。これは大きく3つのポイントに分類されます。
1つ目は、BYOD(Bring Your Own Device:ビーワイオーディ)といったいわゆる個人端末ではなく、業務用端末を会社から貸与するというものです。仕事に関する内容をやりとりする端末が個人のものであると、情報漏えいのリスクが高まります。
2つ目は、端末とセキュリティシステムとの連携です。これによって、アクセスできる情報やネットワークを制御することができます。
3つ目は、MDM(Mobile Device Management:携帯端末管理)システムを導入することです。万が一社員が端末を紛失したり盗難に遭ったりした場合でも、機密情報が漏れないよう、最小限のリスクに留めることが可能となります。
なお、テレワークのセキュリティに関しては、総務省の『セキュリティガイドライン』が参考になりますので、詳細はそちらをご覧ください。
管理業務の環境を改善すること
テレワークの勤務環境はオフィス勤務と大きく異なるため、コーポレート部門やマネジメント層の管理業務も同様に改善が必要です。ここでもポイントを3つにまとめました。
1つ目は、勤務状況や就労状況の確認、把握です。テレワークではオフィスへの出退勤がなくなることと業務中の社員の状態を目視できなくなることから、ICTツールの在席機能を活用するとよいでしょう。社員がどういう状況なのかを逐次確認し、異変がないかどうかを把握できるように就労状況を整備していきます。
2つ目は、労働時間の管理です。自宅でのテレワークでは定時になったらオフィスを退出するという物理的な区切りがなく、勤務時間がルーズになりやすい環境にあります。そのため、社内の業務システムを利用して、決められた時間以外は外部から社内データにアクセスできなくするといった仕組みも必要になってくるでしょう。
3つ目は、アクセス権限です。オフィス勤務時と同様、リモート時にもVPN(Virtual Private Network)を用いて社内データのアクセス権限を設けつつ、不必要なデータにアクセスさせないようテレワーク環境の改善を図る必要があります。
なおこれらは就業規定などの変更も関わってくるため、既存の就業規定をテレワークに合わせてアップデートするのを忘れないようにしてください。同時に社内の情報セキュリティ研修のコンテンツ内容を刷新し、eラーニングで全社に実施するなどの取り組みも管理側のテレワークの改善点として挙げられます。「ISMS(Information Security Management System:情報セキュリティマネジメントシステム)」の策定・実施も効果的でしょう。
働く環境そのものを改善すること
テレワークを導入すると働き方そのものが物理的に変わるため、働く環境を再考し、テレワークに適した環境へと改善することが求められます。
例えば、業務に必要なツール群を一カ所に集約しアクセスを簡便にする「デジタルワークプレイス」の導入です。クラウド型でテレワークと親和性の高いMicrosoft 365(旧Office 365)や、G SuiteなどのSaaS(Service as a Software:サービスとしてのソフトウェア)が挙げられます。これらは端末にソフトウェアをインストールする必要がなく、マルチデバイスでも利用できるため、非常に有用です。
こうしたSaaSは、時間的なコストも人的なコストも抑えて導入できるため、企業規模によっては検討材料として視野に入れてもよいでしょう。その他にもテレワークの環境や業務効率を改善する多くのツールが各社から提供されているので、テレワーク導入の担当者は随時キャッチアップしていくよう心がけましょう。
また、2020年初頭のテレワーク導入当初は外出自粛も相まって在宅勤務が主な選択肢となっていましたが、今後はサテライトオフィスやシェアオフィス、コワーキングスペースを活用するなど、より柔軟なテレワーク環境の改善も必要となるでしょう。
ただこうした在宅以外の働く場所の環境整備は大きなコストが発生します。社員が自宅で就業しやすいよう、オフィス家具や照明器具、ヘッドセットといった備品を用意するための手当支給金を導入するというのも一つの手です。テレワーク環境の改善は、できるところから、できる範囲で進めていくことも重要なポイントです。
まとめ
本記事では、テレワークの導入を検討している企業担当者に向けて、改善すべきポイント3つを俯瞰的に解説しました。
1. コミュニケーション環境を改善すること
オフィス勤務と同様のコミュニケーションができるよう、ICTツールを活用した改善を行いましょう。
2. 管理業務の環境を改善すること
社員の勤務時間や就業時の状況把握など、不可視となった部分をコーポレート部門やマネジメント層で業務システムをうまく活用しながらコントロールしていきましょう。セキュリティ面にも配慮することが重要です。
3. 働く環境そのものを改善すること
働く環境が物理的に変わるため、社員がより働きやすい環境をクラウドソフトウェアの導入やサテライトオフィスなどの敷設、自宅の環境整備に必要な一時金などによって支援できるよう全社を挙げて改善に取り組みましょう。こういった環境変化に伴って生じる不都合は、社員からは声を上げにくいものです。
テレワーク推進の担当者は、積極的に現場の声に耳を傾け、より一層の環境改善に取り組んでください。