属人化を解消する方法|業務の優先順位と残す線引き
最終更新日:2026年10月8日
「マニュアルを作れ」と言われても、対象の業務が20も30もあると、どこから手をつけるべきか決まりません。属人化の解消が進まない原因の多くは、意識や文化ではなく「着手する順番と、やらない範囲が決まっていないこと」にあります。
この記事では、属人化した業務を実際に減らしていくための実務手順を、4つのステップに分けて解説します。読み終えると、次の4つが決まります。
- どの業務から手をつけるか:発生頻度と代替不可能性の2軸で優先順位を決める方法
- どこまでやるか:解消しなくてよい業務、属人化のまま残してよい業務の線引き
- 何を書くか:手順書・判断基準・背景の3層で書き分ける方法
- どうすれば止まらないか:解消が途中で止まる3つの構造的な原因と対策
「属人化はよくないこと」という前提で全業務の標準化を目指すと、たいていの場合は途中で力尽きます。この記事では、解消する業務と残す業務を先に分けることを出発点にします。
目次
属人化とは?特定の担当者しか業務を進められない状態のこと
属人化とは、特定の担当者しか業務の内容や進め方を把握しておらず、その人が不在になると業務が滞る状態を指します。「業務の属人化」「仕事の属人化」とも呼ばれます。
判断の目安はシンプルです。「明日その担当者が休んだとき、今日中に代われる人が社内にいるか」。いない業務は属人化しています。この定義は、後述する優先順位づけでもそのまま使います。
属人化と専門性(スペシャリスト)の違い
属人化と専門性は混同されやすいものの、別の状態です。
| 属人化 | 専門性(スペシャリスト) | |
|---|---|---|
| 知識の所在 | 本人の頭の中だけにある | 本人が持ちつつ、組織にも共有されている |
| 他者の関与 | 進め方が外から見えない | 進め方は見え、判断だけが本人に集まる |
| 不在時 | 業務が止まる | 品質は落ちるが、業務は動く |
| 組織への蓄積 | 退職とともに失われる | 後進に引き継がれる |
専門性が高いこと自体は問題ではありません。問題になるのは、専門性が高いことと、進め方が誰にも見えないことがセットになっている状態です。属人化の解消とは、専門性を薄めることではなく、進め方を外から見えるようにすることを指します。
属人化が起きやすい業務の共通点
属人化しやすい業務には、次のような共通点があります。
- 担当が1人しかいない:組織図上は複数人でも、実質的に1人が回している
- 発生頻度が低い:年1回の決算対応、システム障害対応など、繰り返しが少なく手順が定着しない
- 手順が途中で変わってきた:変更の経緯が本人の記憶にしか残っていない
- 例外処理が多い:基本の流れはあるが、実際は例外対応の判断で成り立っている
- 引き継ぎが口頭で終わっている:前任者から画面を見ながら教わり、記録が残っていない
このうち「発生頻度が低い」業務は、日常的には困らないため後回しにされます。ところが担当者が抜けたときの影響は最も大きくなります。この点は後の優先順位づけで扱います。
部門別に見る属人化の具体例
自部門で何が該当するかを判断しやすいよう、部門ごとの典型例を挙げます。
| 部門 | 属人化しやすい業務の例 | 詰まりやすいポイント |
|---|---|---|
| 経理・財務 | 月次締め、決算対応、税務関連の申告準備 | 例外的な仕訳の判断基準が担当者の記憶にある |
| 人事・労務 | 給与計算、入退社手続き、勤怠の例外処理 | 制度改定の経緯が記録されていない |
| 情報システム | サーバー・アカウント管理、障害対応、ベンダー窓口 | 設定変更の理由が残っておらず、触れない設定が増える |
| 営業 | 主要顧客の窓口対応、見積もりの条件設定 | 顧客ごとの経緯と過去の約束事が個人のメールにある |
| カスタマーサポート | 難易度の高い問い合わせ、クレーム対応 | エスカレーションの判断が個人の経験に依存する |
| 製造・現場 | 設備の調整、品質判定 | 手を動かして覚えた感覚が言語化されていない |
いずれも「手順が書かれていない」ことより、判断の基準と経緯が記録されていないことが共通の詰まりポイントになっています。この点は後述する「3層で書き分ける」で扱います。
業務が属人化する3つの原因
属人化は、担当者の意識や隠す意図によって起きるものではありません。多くは業務の構造から自然に発生します。原因を3つに整理します。
原因1:業務が専門的で、分けられないと思われている
専門知識が必要な業務は「教えるより自分でやったほうが早い」と判断されがちです。この判断は短期的には合理的で、そのつど正しい選択をしているうちに、気づくと1人しか対応できない状態になります。
原因2:引き継ぎが口頭で終わっている
異動や退職のたびに、前任者が画面を見せながら口頭で説明し、後任がメモを取る。この形式では、説明されなかった例外処理と、手順の背景が引き継がれません。結果として、後任は「言われたとおりにやっているが、なぜそうするかは分からない」状態になります。
引き継ぎが口頭のみで終わるのは、引き継ぎ期間が限られており、記録を残す時間が確保されていないためです。異動や退職が決まってから着手すると、時間的な余裕がありません。
原因3:担当を1人に固定したまま見直していない
業務の割り当ては、決めた時点では合理的でも、担当者が慣れるほど「その人に任せたほうが速い」状態が強化されます。担当を見直す機会が制度として組み込まれていないと、配置は固定されたままになります。異動や組織変更のタイミングで担当の棚卸しをしていない場合、この状態は年単位で続きます。
なお「書く時間がない」「書いても読まれない」は、属人化が起きる原因というより、解消の取り組みが途中で止まる原因です。手順4でまとめて扱います。
属人化に限定した統計ではありませんが、厚生労働省の令和6年度「能力開発基本調査」では、能力開発や人材育成に関して何らかの問題があるとする事業所は79.9%にのぼりました(令和7年6月27日公表)。人材育成の課題そのものは、多くの組織に共通しています。
属人化を放置すると起きること
属人化を放置した場合の影響は、大きく3つに整理できます。
- 担当者の不在で業務が止まる:休暇、異動、退職のたびに業務が停止します。特に退職の場合は、引き継ぎ期間が限られるため影響が長期化します
- 品質のばらつきが生まれる:進め方が人によって違うため、対応した人によって結果が変わります。改善しようにも、比較対象がないため何を直せばよいかが分かりません
- 担当者本人の負担が固定される:休みが取りづらく、他の業務にも移りにくくなります。本人にとっても不利益です
3つ目は見落とされがちですが重要です。属人化の当事者は、その状態を望んで作ったわけではありません。「あの人が抱え込んでいる」という捉え方をすると、解消の協力は得にくくなります。構造の問題として扱うほうが、結果的に前に進みます。
業務の標準化そのものの考え方については、仕組み化の手順とメリットを解説した記事で詳しく扱っています。
【手順1】どの業務から手をつけるか|発生頻度 × 代替不可能性の2軸で決める
属人化の解消は、対象業務を絞ることから始めます。業務を洗い出したあと、すべてに着手しようとすると必ず途中で止まります。ここでは2つの軸で優先順位を決めます。
2軸の測り方
軸1:発生頻度
その業務が発生する回数です。3段階で分けます。
- 高:週1回以上
- 中:月1回程度
- 低:年に数回以下
軸2:代替不可能性
「明日その担当者が休んだとき、今日中に代われる人が社内に何人いるか」で測ります。
- 高:0人(本人だけ)
- 中:1人(ほぼ本人だが、時間をかければ代われる人がいる)
- 低:2人以上
この2軸を掛け合わせると、業務は4つの領域に分かれます。
| 代替不可能性が高い(代われる人が0〜1人) | 代替不可能性が低い(2人以上) | |
|---|---|---|
| 発生頻度が高い | A:最優先で解消する | C:手順を統一して品質を揃える |
| 発生頻度が低い | B:止まったときの手順だけ残す | D:今は着手しない |
A:頻度が高く、代替できない業務 → 最優先で解消する
毎日または毎週発生し、担当者が1人しかいない業務です。ここが止まると即座に業務が停止します。属人化解消の効果が最も大きく、最初に着手すべき領域です。
具体例としては、月次の請求処理、特定システムの運用作業、主要顧客の窓口対応などが挙げられます。
退職・異動が決まっている担当者の業務は、発生頻度に関わらずA領域として扱います。期限が明確に区切られているためです。退職の申し出から最終出社日までの期間は限られており、その間に書き残せなかったものは、以後は誰にも復元できません。手順1の分類を行う前に、まず「今後3か月以内に担当者が変わる予定の業務」を洗い出しておくと、優先順位づけがそのまま引き継ぎ計画になります。
B:頻度が低く、代替できない業務 → 止まったときの手順だけ残す
年に数回しか発生せず、担当者が1人しかいない業務です。年次の決算対応、システム障害対応、監査対応などが該当します。
この領域は日常的には困らないため後回しにされますが、起きたときの影響は4領域の中で最大です。ただし発生頻度が低いため、詳細な手順書を作っても次の発生時には内容が古くなっています。
そこで、この領域では手順書ではなく次の3点に絞って残します。
- その業務が存在すること(業務リストに載せる)
- 誰に聞けばよいか(社内外の連絡先)
- 判断の前提(なぜその対応をするのか)
手順の詳細を書き切ろうとせず、「調べ始める起点」を残すことに目的を限定します。
C:頻度が高く、代替できる業務 → 手順を統一して品質を揃える
複数人で回しているものの、やり方が人によって違う業務です。止まるリスクは低い一方、品質のばらつきが問題になります。
この領域は、既存のやり方を1つに統一する作業が中心になります。ゼロから書き起こすより負担が軽く、比較的短期間で成果が出ます。Aの着手と並行して進められる領域です。
D:頻度が低く、代替できる業務 → 今は着手しない
この領域を「やらない」と決めることが、この手順で最も重要です。年に数回しか発生せず、複数人が対応できる業務に手をかけても、費やした時間に見合う効果は得られません。
業務の洗い出しまでは進んでも、洗い出したあとに何を外すかを決めないまま止まってしまうケースは少なくありません。着手しない範囲を明示することで、残った業務に工数を集中できます。
業務の洗い出しは「直近1週間の実作業」から始める
業務の洗い出しを網羅的にやろうとすると、それ自体が数週間のプロジェクトになります。最初は範囲を絞ります。
- チームの各メンバーに、直近1週間で実際にやった作業を書き出してもらう(1人15〜30分程度)
- 出てきた作業に、前述の2軸(発生頻度・代替不可能性)を記入する
- A領域に入ったものだけを抜き出す
この方法だと、年次業務など低頻度の業務は漏れます。そのため、四半期に1回ほど同じ作業を繰り返し、B領域を少しずつ拾っていきます。最初から完璧な業務一覧を作ろうとしないことが、継続のコツです。
記入例:洗い出しから優先順位づけまで
実際の記入イメージは次のようになります。
| 業務 | 発生頻度 | 代われる人 | 領域 | 対応 |
|---|---|---|---|---|
| 月次請求データの締め処理 | 月1回 | 0人 | A | 最優先で手順書・判断基準・背景を書く |
| 基幹システムの障害一次対応 | 年2〜3回 | 0人 | B | 連絡先と判断の前提だけ残す |
| 問い合わせメールの一次返信 | 毎日 | 4人 | C | 返信テンプレートを統一する |
| 年末の備品棚卸し | 年1回 | 5人 | D | 今回は着手しない |
| 主要顧客A社の窓口対応 | 週2〜3回 | 1人 | A | 過去の経緯と条件を記録する |
この表があると、「なぜこの業務を先にやるのか」をチーム内で説明できます。着手しない業務を表に残しておくことで、「見落としたのではなく、判断して外した」ことが後から分かる点も重要です。
【手順2】属人化を解消しない業務を先に決める|線引きの3条件
すべての業務を標準化する必要はありません。属人化のまま残したほうがよい業務は確実に存在します。この線引きを先に決めておくと、解消作業の対象が現実的な量に収まります。
属人化にメリットがあるのはどんな業務か
属人化にメリットが生まれるのは、担当者の判断そのものが成果を左右する業務です。意思決定が速い、前提を共有する手間なく動ける、顧客との関係が深いといった利点は、担当が1人に固定されているからこそ成立しています。
一方でこれらは、その人が不在になったときのリスクと表裏一体です。したがって「メリットがあるかどうか」ではなく、そのメリットを手放してでも代われる人を増やすべきかどうかで判断します。以下の3条件は、その判断のための線引きです。
なぜ「全部を標準化する」と失敗するのか
理由は2つあります。
1つ目は、工数の問題です。標準化には書く時間、レビューする時間、更新し続ける時間がかかります。効果の薄い業務まで対象にすると、効果の大きい業務にかける時間が足りなくなります。
2つ目は、手順化に向かない業務に手順を作ると、かえって品質が落ちることです。毎回前提が変わる業務に固定の手順を当てはめると、手順どおりにやったのに結果が悪いという状況が生まれます。
条件1:判断の前提が毎回変わる業務
顧客ごとに条件が異なる価格交渉、案件ごとに評価軸が変わる企画の方向性決定などが該当します。これらは手順ではなく、判断の材料と過去の判断例を共有する形が適しています。
条件2:例外対応そのものが提供価値になっている業務
「あの人に頼むと何とかしてくれる」という状態が、顧客や社内から評価されている業務です。標準化によって対応の幅を狭めると、提供している価値そのものが失われます。
ただしこの場合も、どこまでが標準対応で、どこからが例外対応なのかの境界は明示しておく必要があります。境界が曖昧なままだと、本人の負荷が際限なく増えます。
条件3:標準化のコストが効果を上回る業務
年に1回、30分で終わる作業のために3時間かけて手順書を作る意味は薄いと判断できます。手順1のD領域はこれに当たります。
「属人のまま残す」場合にやっておくこと
属人化のまま残すと決めた業務にも、最低限の保険はかけておきます。
- 業務リストには載せる:「その業務が存在すること」だけは組織として把握しておきます。存在自体が知られていない業務が最も危険です
- 背景と判断基準は残す:手順は残さなくても、「なぜその対応をしているか」「どういう条件で判断が変わるか」は書いておきます
- 代われないことを組織として合意する:担当者が1人であることを、本人の責任ではなくチームの前提として共有します。これにより、その人が休むときの体制をあらかじめ決めておけます
属人化を「悪いこと」として一律に扱わず、解消する業務と、意図的に残す業務を明確に分ける。この整理が、解消作業を最後まで進めるための土台になります。
【手順3】何を書くか|手順書・判断基準・背景の3層で分ける
「マニュアルを作る」という指示のままだと、書く側は何をどこまで書けばよいか判断できません。書く内容を3つの層に分けると、粒度の判断が容易になります。
結論から書くと、着手すべきは第2層(判断基準)です。手順書だけを渡された後任が詰まるのは、たいてい操作ではなく判断の場面だからです。3層すべてを一度に書こうとすると着手のハードルが上がるため、判断基準から書き始め、第1層と第3層は後から足していきます。
第1層:手順書(何を、どの順番でやるか)
手を動かす順番です。誰がやっても同じ結果になる部分を書きます。
- 使用するシステム、画面、ファイルの場所
- 操作の順番
- 実施のタイミング(毎月25日、依頼を受けてから3営業日以内など)
第2層:判断基準(迷ったとき、どちらを選ぶか)
選択肢が複数ある場面で、どの条件のときにどちらを選ぶかを書きます。属人化の解消で最も効果が大きいのはこの層です。
- 条件分岐(金額が○円を超える場合は上長承認を得る)
- 例外の扱い(締め日が土日祝の場合は前営業日に前倒しする)
- エスカレーションの基準(どの状況になったら誰に相談するか)
第3層:背景(なぜそうしているのか)
その手順・その基準になっている理由です。過去の経緯、社内外の制約、変更の履歴を書きます。
この層がないと、担当が変わったときに手順の妥当性を判断できません。「もっと効率的な方法があるのでは」と変更した結果、過去に問題が起きて避けていた方法に戻ってしまう、といったことが起こります。
3層の書き分け例:請求データの締め処理
| 層 | 記述例 |
|---|---|
| 第1層:手順書 | 毎月25日に管理画面から請求データをCSVで出力し、経理提出用の形式に変換して経理担当へ共有する |
| 第2層:判断基準 | 25日が土日祝の場合は前営業日に前倒しする。請求額が100万円を超える案件は、提出前に部門長の承認を得る |
| 第3層:背景 | 締め日は以前は月末だったが、経理の月次確定が翌月3営業日に前倒しされたため25日に変更した。月末に戻すと経理側の締めが間に合わない |
第1層だけを引き継いだ後任は、締め日の変更を提案してしまう可能性があります。第3層があれば、変更の可否をその場で判断できます。
3層を書式にして書く負担を下げる
書式を毎回考えずに済むよう、3層をあらかじめ組み込んだ書式を用意しておくと、書く負担が下がります。DocBaseでは決まった書式をテンプレート化できます。設定手順はDocBaseでテンプレートを使ってメモを作成する方法、運用のコツはDocBaseのテンプレート活用のベストプラクティスをご覧ください。
読み手にとってのわかりやすさを高めるポイントは、マニュアル作成のコツをまとめた記事でも解説しています。
DocBaseがおすすめ|属人化の解消に選ばれる理由
属人化の解消は、書く負担が軽く、書いたものが読まれる場所があってはじめて続きます。DocBaseは、その2点を満たすことを目的に設計されたナレッジ共有ツールです。
- Markdownに不慣れなメンバーでも書ける:リッチテキストモード(WYSIWYG編集)で直感的に編集できます。内部フォーマットはMarkdownに統一されるため、メンバーによって編集方法が異なっても、フォーマットが混在することがありません
- ユーザー単価制ではなくチーム単位の定額制:人数を数えずに予算が読めるため、関係者全員が参加しやすい料金体系です
- 利用継続率99%(自社集計)、ISO 27001(ISMS)認証取得
具体的な機能と使い方は、この記事の後半「DocBaseで属人化の解消を進める方法」で解説します。
30日間の無料トライアルをご用意しています。クレジットカードの登録は不要で、初期設定費用もかかりません。
【手順4】属人化の解消が途中で止まる3つの原因と対策
対象業務を決め、書く内容を決めても、実際には途中で止まることがあります。止まる原因は精神論ではなく、多くの場合は構造にあります。代表的な3つと対策を挙げます。
原因1:書く時間が業務として割り当てられていない
「余裕があるときに書く」という扱いのままだと、多忙な担当者ほど書けません。属人化が進んでいる業務ほど担当者は忙しいため、この構造では永久に着手されません。
対策
- 週次の定例に「30分だけ書く時間」を組み込み、業務時間として確保する
- 1業務1メモではなく、30分で書き切れる粒度に分割する
- 最初の対象を10〜20業務に絞り、完了の見通しが立つ量にする
「いつか全部やる」ではなく「今月はこの5件」と量を区切ることで、進捗が可視化され、続きやすくなります。
原因2:書いた本人が損をする構造になっている
次の2つが同時に起きていると、書くインセンティブが働きません。
- 「自分しかできない業務がある」ことが、暗黙のうちに評価や立場につながっている
- 書いたことで質問がその人に集中し、かえって負担が増える
対策
- 書いたこと自体を評価対象に入れる:業務を抱えていることではなく、引き継げる状態にしたことを評価します
- 読まれた実績を見えるようにする:DocBaseの既読メンバー機能では、メモを読んだメンバーを確認できます。書いたものが実際に使われている事実が見えると、書く動機になります
- 書き手にフィードバックが返る導線をつくる:コメントや@メンションで、読んだ側から質問や補足が届く形にします。書きっぱなしにならず、内容の精度も上がります
原因3:書いても読まれない
書いたものが探せない、置き場所が分散している、古い情報が混ざっている。この状態だと、読み手は結局本人に聞くほうが早いと判断します。
対策
- 置き場所を1か所に集約する:共有フォルダ、個人のローカル環境、チャットのログに分散している状態を解消します
- 探せる状態を保つ:分類(タグ)と検索性を確保します。DocBaseでは、AIタグ自動生成でメモの内容からタグを提案できるため、分類の手間を減らせます。添付ファイル(PDF・Excel等)も全文検索の対象です
- 定期的に棚卸しする:古い情報が残っていると、書いてある内容そのものが信用されなくなります
ドキュメントが増えたあとの鮮度管理については、社内ドキュメントの棚卸し手順を解説した記事で扱っています。属人化の解消でドキュメントを増やしたあとは、腐らせない仕組みとセットで考えることをおすすめします。
※【入稿時に要対応】「社内ドキュメントの棚卸し手順」記事(メモ #4210585)の公開URL確定後、上の段落にリンクを設置してください。UTMの扱いは本メモ末尾「③内部リンク一覧」の注記に従います。この引用ブロック自体は公開前に削除してください。
属人化を解消したチームの事例
障害対応を全社員ができる状態に(大垣ケーブルテレビ様)
ケーブルテレビ事業を手がける大垣ケーブルテレビ様(導入時78名)では、ノウハウが個人の頭の中にしかなく、情報が共有フォルダ・個人ローカル環境・紙に分散していました。障害が発生しても対応できる人が限られており、経験の浅いメンバーは自力で解決できない状態だったといいます。
DocBase導入後は、全社員が障害対応をできるようになり、新人でも不具合対応ができる状態に変わりました。情報を探す時間が減り、同じ人が同じ質問を受ける頻度も減っています。
「知ってる人しか知らない」状態の解消(株式会社マイナビ様)
株式会社マイナビ様では、事業部ごとに異なるツールを使っていたため、情報共有はできていても部内で閉じてしまう課題がありました。経験年数による知識の偏りが大きく、「知ってる人しか知らない」ケースが発生していたといいます。
DocBaseのメンバー数は380人(導入事例掲載時点)で、システム統括本部が管理し、複数の事業部でシステム職を中心に300人弱が利用しています。導入後はチーム内の知識の偏りがなくなり、「知ってる人しか知らない」ケースが減りました。聞かれる側は質問を受ける回数が大きく減り、そのぶんやりたいことに時間を回せるようになったといいます。
そのほかの活用例は、DocBaseの導入事例一覧でご覧いただけます。
属人化の解消に使うツールの選び方|4つの基準
ツールを導入しただけで属人化が解消することはありません。一方で、書く負担と探す負担を下げるという点で、ツールの選択は結果に影響します。選定時に確認したい基準を4つ挙げます。
基準1:書く負担が軽いか
書く側のITリテラシーはメンバーによって異なります。Markdown記法が必須のツールでは、メンバーによって書く負担に差が出ることがあります。編集画面を実際に触って、業務の担当者本人が書けるかを確認してください。
基準2:探せるか
検索の精度と範囲を確認します。本文だけでなく、添付ファイル(PDF・Excelなど)の中身まで検索対象になるかは、実務で差が出るポイントです。
基準3:読まれたかが分かるか
書いた内容が使われているかを把握できると、更新の優先順位を決められます。閲覧状況を確認できる機能があるかを確認します。
基準4:公開範囲を設計できるか
「全社に公開するのは抵抗があるが、チーム内でなら共有できる」という業務は少なくありません。公開範囲を段階的に設定できると、書き始めるハードルが下がります。人事情報や契約情報を扱う場合は、アクセス制御の要件も確認が必要です。
これらの基準は、ナレッジ共有ツール、マニュアル作成ツール、社内wikiツールなど複数のカテゴリにまたがります。自社の体制と予算に合わせて、複数のツールを比較検討することをおすすめします。DocBaseの機能一覧はDocBaseの機能紹介ページ、料金体系はDocBaseの料金プランを確認するからご確認いただけます。
DocBaseで属人化の解消を進める方法
ここまでの4つの手順を、DocBaseでどう実践するかをまとめます。
3層構成をテンプレートにする
「手順書・判断基準・背景」の3層をあらかじめ書式にしておくと、書く側は空欄を埋めるだけで済みます。DocBaseではtemplateタグを付けたメモがテンプレートとして利用でき、公開範囲やタグも事前に設定できます。日付を自動入力するテンプレート変数にも対応しています。
書いたものが読まれたかを確認する
既読メンバー機能で、メモを閲覧したメンバーを確認できます。CSVでの出力にも対応しています。書いた内容が実際に読まれているかが分かることで、更新すべきメモの優先順位を判断できます。
コメント・@メンションで書き手にフィードバックを返す
メモにコメントを付け、@メンションで特定のメンバーや全員に通知できます。読んだ側から「この場合はどうするか」という質問が届くことで、抜けている判断基準が明らかになります。
AIタグ自動生成で分類の手間を減らす
メモの内容からタグを自動で提案します。分類の負担が減ることで、書いたあとに整理されないまま埋もれる事態を防げます。AI機能はチーム管理者がON/OFFを一括管理でき、AIへの入力データがAIの学習に利用されることはありません。AI機能の詳細はDocBaseのAI機能紹介ページをご覧ください。
グループと公開範囲で「書ける範囲」を作る
メモの公開範囲は「全体」「グループ」「自分のみ」から選べます。1つのメモを複数のグループに公開することも可能です。まずはチーム内限定で書き始め、内容が固まってから全体公開に切り替える運用ができます。
セキュリティ要件の詳細はDocBaseのセキュリティ機能の詳細ページをご確認ください。なお、IPアドレス制限、SAML SSO、2段階認証の必須化、操作履歴のCSVエクスポート、グループ単位のAI利用制限は、有料オプション「セキュリティパック」の機能です。
属人化の解消を、まずは5件から始める
最後に、この記事の内容を今日から実行する手順にまとめます。
- 書き出す:チームの各メンバーに、直近1週間で実際にやった作業を書き出してもらう(1人15〜30分)
- 分類する:発生頻度と代替不可能性の2軸でA〜Dに振り分ける。今後3か月以内に担当者が変わる予定の業務は、頻度に関わらずAに入れる
- 5件選ぶ:A領域から5件だけ選ぶ。DとBは今回は動かさない
- 第2層から書く:選んだ5件について、判断基準(迷ったときにどちらを選ぶか)から書き始める。1件30分を目安にする
▶ DocBaseで属人化の解消を無料で試す(30日間無料トライアル)
30日間の無料トライアルをご利用いただけます。クレジットカードの登録は不要、初期設定費用もかかりません。上の4ステップは、トライアル期間内に一巡できる分量です。5件書ければ、続けられる体制かどうかが判断できます。
導入前に確認しておきたい点は、DocBase導入前のよくある質問にまとめています。
属人化の解消に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 属人化とは何ですか?
属人化とは、特定の担当者しか業務の内容や進め方を把握しておらず、その人が不在になると業務が滞る状態を指します。判断の目安は「明日その担当者が休んだとき、今日中に代われる人が社内にいるか」です。いない場合、その業務は属人化しています。
Q2. 属人化にメリットはありますか?
短期的には、意思決定が速い、専門性を活かした対応ができるといった側面があります。また、判断の前提が毎回変わる業務や、例外対応そのものが提供価値になっている業務では、無理に標準化しないほうが品質を保てる場合があります。
ただしこれらは、担当者が不在になったときのリスクと表裏一体です。属人化のまま残すと判断した業務についても、「その業務が存在すること」と「判断の背景」だけは記録し、組織として把握しておくことをおすすめします。
Q3. すべての業務をマニュアル化する必要がありますか?
必要ありません。発生頻度が低く、複数人が対応できる業務まで文書化すると、作成と更新の負担が効果を上回ります。まずは「発生頻度が高く、担当者が1人しかいない業務」に絞って着手し、そこから範囲を広げていくことをおすすめします。
Q4. 属人化とスペシャリストの違いは何ですか?
専門性が高いこと自体は属人化ではありません。属人化は、専門性が高いことに加えて「進め方が外から見えない」状態が重なったときに発生します。専門性を持つ人が、判断の基準と背景を共有できていれば、その業務は属人化していません。
Q5. 退職者が出てから引き継ぎを始めても間に合いますか?
引き継ぎ期間内に書き残せる範囲は限られるため、間に合わないことが多くなります。退職や異動が決まった時点でできるのは、対象業務を絞ることです。その担当者しか対応できない業務を洗い出し、判断基準と背景を優先して記録します。手順の詳細は後任が実務のなかで補えますが、判断の前提は本人がいなくなると復元できません。
業務引き継ぎの具体的な進め方は、業務引継ぎの手順とコツを解説した記事で扱っています。
Q6. 属人化の解消にはどのくらいの期間がかかりますか?
対象業務の数によって変わるため、一律の目安はありません。ただし「全業務を終わらせる」という目標設定にすると期間が読めなくなります。「今月はA領域の5件」というように量で区切ると、進捗を管理できます。1件あたり30分で書ける粒度に分割することをおすすめします。
Q7. 属人化の解消と業務の仕組み化は何が違いますか?
属人化の解消は「誰が対応できるか」を広げる取り組み、仕組み化は「どういう流れで業務を回すか」を設計する取り組みです。目的は重なりますが、出発点が異なります。仕組み化の考え方は仕組み化の手順とメリットを解説した記事で解説しています。
まとめ
属人化の解消は、業務を洗い出した「あと」に何を決めるかで結果が変わります。この記事で扱った4つの手順をまとめます。
- 手順1:着手する業務を絞る — 発生頻度 × 代替不可能性の2軸で4領域に分け、頻度が高く代替できない業務から着手します。頻度が低く代替できる業務は着手しないと決めます
- 手順2:解消しない業務を決める — 判断の前提が毎回変わる業務、例外対応が価値になっている業務、標準化コストが効果を上回る業務は、属人化のまま残す選択をします。ただし業務の存在と背景は記録します
- 手順3:3層で書き分ける — 手順書・判断基準・背景の3層に分けます。実務で最も詰まるのは判断基準なので、第2層から書き始めます
- 手順4:止まる原因に対処する — 書く時間の確保、書いた人が損をしない設計、読まれる状態の維持。この3つは構造の問題として扱います
属人化は、担当者が意図して作ったものではありません。責める対象ではなく、設計し直す対象として扱うことが、解消を最後まで進めるための前提になります。
編集ポリシー
本記事はDocBase開発元である株式会社KRAYが作成しています。可能な限り客観的な情報提供を心がけていますが、自社製品に関する記事であることをあらかじめご了承ください。
参考にした情報
- 厚生労働省「令和6年度『能力開発基本調査』の結果を公表します」(令和7年6月27日公表)https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00202.html
- 導入事例は、株式会社マイナビ様・大垣ケーブルテレビ様へのインタビュー記事(当サイト掲載)にもとづきます



