テレワークにおける情報共有の課題とは?
テレワークの導入が徐々に普及していますが、オフィスワークとは異なる働き方のため課題も生じています。ただこれはテレワークがオフィスより劣っているというわけではなく、働き方が多様化したことから、それに合わせてハード面とソフト面の両方で変革が必要になったと言えるでしょう。
テレワークで生じている課題の中でも、本記事では「情報共有の課題」に焦点を当て、具体的な内容と解決に向けたポイントについて解説します。
目次
テレワークの情報共有における3つの課題
テレワークの情報共有には、大小さまざまな課題がありますが3つに大別されます。
- 情報活用の課題
- セキュリティの課題
- コミュニケーションの課題
この3つについて具体的な課題と対策を紹介していきます。
情報活用の課題と解決策
【課題】
各々が遠隔で働くテレワークでは、場所を共有できないことから、情報が個人に「閉じ込められて」しまいます。この「閉じ込められる」状態とは、業務の進捗状況や作業履歴が周りに見えなくなっている状況です。
業務の進捗状況が見えない状況では、オフィスワークであれば、本人に直接聞いて解決できましたが、テレワークでは回答までに時間を要することがあります。結果として業務が滞り、計画通りに進められない事態が起こりえます。
また、作業履歴が見えない状況では、データが「先祖返り」を起こすリスクが生じます。先祖返りとは「データを更新した際に昔の状態に戻ってしまうこと」で、古いファイルを上書きすることでしばしば起こります。誰がどこまで作業していたかという情報を共有できていないため、こうした事態が起こります。
【解決策】
テレワークにおける情報活用の課題を解決するには、「デジタルワークプレイス」と呼ばれる、デジタル上にドキュメントやファイル、情報共有の手段を集約して一元管理するツールの導入が効果的です。
例えばドキュメントやファイルについては、オンラインで扱うことで他メンバーの進捗状況や作業履歴を追えたり、共同編集ができたり、バージョン管理ができたりするというメリットがあります。コメントや変更履歴を残しておけば円滑に業務の引き継ぎができますし、誤って先祖返りを起こすリスクも低減するでしょう。「閉じ込められた」状態からオープンな環境へと改善します。
弊社が提供するDocBaseでも情報共有をスマートに行うことができます。
セキュリティの課題と解決策
【課題】
「シャドーIT」という言葉をご存知でしょうか。これは、会社が承認していないパソコンやスマートフォン、あるいはWebサービス、クラウドサービスを業務あるいは情報共有の手段として利用することです。具体的には、自分のプライベートな端末でチャットをしたり、業務上のファイルをダウンロードして閲覧・編集したりなどを指します。
コロナ禍では企業に導入されたテレワークが突貫工事で、従業員の環境整備が間に合わなかったことから、管理の行き届いていない「BYOD(Bring Your Own Device 従業員自身の所有する端末)」が利用されているケース、端末を貸与できた企業であっても、従業員個々の使用状況について、企業が完全に把握しきれていないケースが見られるようです。
ここでしかるべき対策を行っていない企業では、情報漏洩やウイルス感染のリスクが高まっていることが容易に推測できるでしょう。これを「シャドーIT問題」と呼びます。
また、テレワークで業務端末やサービスを利用する際のセキュリティに関して、テレワークに即した規則のアップデートが追いついていない企業も散見されます。テレワークではルール付けが必須ですが、残念ながらルールを設けずテレワークを運用している企業も存在します。
【解決策】
テレワークにおけるセキュリティの課題に関して、ハード面では業務用端末の貸与がもっとも安全です。プライベートな端末の利用は禁止し、パソコンとスマートフォンを貸与することでオフィス勤務と近い環境下で管理ができるでしょう。
また、従業員個々のセキュリティ意識を向上させるソフト面での対策も重要です。テレワークを導入するにあたっては、テレワークを想定したセキュリティのルール作りを行いましょう。また研修会社が実施する情報セキュリティ研修の内容も更新されているはずです。すでにテレワークを実施している場合は、早急に全社で実施しましょう。
テレワークでの情報共有におけるセキュリティについては、総務省の「テレワークにおけるセキュリティ確保」が参考になります。また当サイトでもテレワークにおけるセキュリティについての記事があります。そちらも参考にご覧ください。
コミュニケーションの課題と解決策
【課題】
チャットツールを使用したテレワークでのコミュニケーションは、オフィスワークと比べると表現の仕方や伝え方によって誤解が生じ、取引先や同僚・部下に悪印象を与えてしまうケースが見られます。
また、チャットツールは業務指示に特化しがちで雑談をはさむ余地がありません。チームの雰囲気がギズギズして、一体感が損なわれてしまうことにつながります。コミュニケーションの手法を改めて考える必要が生じているともいえるでしょう。
【解決策】
テレワークにおけるコミュニケーションの課題を解決するために、3つのポイントを挙げました。
1つ目は、アイスブレイクの活用です。業務指示に終始しがちなビジネスチャットでも、例えばビデオ会議であれば朝や夕方のミーティング時に個々の自宅での様子、体調、ニュースなどに触れたり、テキストチャットでも雑談チャンネルの運用を許可したりなど、緊張のほぐれる仕掛けを導入することでコミュニケーションの改善を図ります。
2つ目は レスポンスに人間味を出すことです。「了解しました」「確認してください」など、短文の用件だけではどこか機械的で冷たさが残ります。そこで、労いや感謝といった、オフィスワークでは口に出さなくてもよかった感情をあえて言葉にして、温かみのあるやり取りを心がけましょう。
3つ目は、お互いにとって気持ちのいいやり取りを実践するという、コミュニケーションの初心に立ち返ることです。情報共有という意味では、簡潔で端的な物言いが好まれますが、チャットツールでは対面のコミュニケーションより相手が受け取る情報量が少ないことを考慮する必要があります。例えば、社内でのテキストチャットである程度の絵文字の利用を許可することも手です。ビジネスシーンで絵文字を使うことはNGとされている企業もあると思われますが、ゆるいコミュニケーション手段もテレワークでは効果が期待できるため、うまく活用するとよいでしょう。
まとめ
テレワークの情報共有における課題には、「情報活用の課題」「セキュリティの課題」「コミュニケーションの課題」の3つが挙げられます。
- 情報活用の課題解決には、「デジタルワークプレイス」と呼ばれる、デジタル上にドキュメントやファイル、情報共有の手段を集約して一元管理するツールの導入が効果的です。
- セキュリティの課題解決には、業務端末の貸与といったハード面の対策とセキュリティのルール作りといったソフト面の対策が効果的です。
- コミュニケーションの課題解決には、緊張のほぐれるアイスブレク的な仕掛け、絵文字の使用などが効果的です。
これらを実践するにあたっては、マネジメント層はこれまでのマネジメント手法を変えなければならないかもしれませんし、人事部門やIT部門は制度やシステムを刷新する必要もあります。解決にあたっては入念な準備と慎重な導入、その後はヒアリングを行い自社に最適化していきましょう。