ナレッジ化とは?実現するメリットや押さえておきたいポイントを紹介
企業にとって重要な資産のひとつは「知識」です。これまでの経験から得た有益な知識やノウハウを社内で共有すれば、成長のスピードが速まり、問題解決までの過程も短縮できるでしょう。そこで注目を集めているのが「ナレッジ化」です。ナレッジ化とは、個人の中に蓄積された知識を共有・活用できるようにする取り組みを指します。
本記事では、ナレッジ化の基本知識から、実現するメリットや注意点などを詳しく解説します。自社の知識遺産を最大限に活かし、競争力を高めたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
【この記事を読んでわかること】
- ナレッジ化の目的やメリットは業務効率化、属人化防止、人材育成、コミュニケーションの促進、イノベーションの促進、知的財産の蓄積
- ナレッジ化を実現するポイントはマニュアルの用意、情報共有ツールの活用、ナレッジ共有の可視化
- ナレッジ化に役立つツールは文書管理システム、ファイル共有システム、グループウェア
目次
「ナレッジ化」の基礎知識
「ナレッジ化」の基礎知識について、以下の3つのポイントにまとめました。
- ナレッジとは
- ナレッジとノウハウの違い
- ナレッジ化とは
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ナレッジとは
ナレッジとは、英語の「knowledge」をカタカナで表記した言葉です。一般的には書籍や新聞などから得られる「知識」を指します。しかし、ビジネスシーンにおいてナレッジとは、単なる知識や情報のみではありません。経験やスキル、ノウハウなどを含めた実践的な知恵のことを指し「使える」体系的な情報を指すのです。
具体的には、以下のようなものがナレッジに含まれます。
- 業務手順やマニュアル
- 顧客対応の技術
- トラブルシューティングの解決策
- マーケティング戦略
- 研究開発成果
以上のようなナレッジは、組織において財産ともいえる情報です。
ナレッジとノウハウの違い
ナレッジとノウハウは、一見同じように見えますが、実は微妙な違いがあります。「ナレッジ」は、普遍的な知識や情報であり、誰でも習得可能なものです。それに対して「ノウハウ」は、具体的なスキルや経験に基づいた知識であり、個人の経験や工夫によって培われます。
ナレッジを有効活用して、実践的にしたものがノウハウともいえるでしょう。簡潔に言えば、ナレッジは理論的な知識や情報、ノウハウは実践的なスキルや手法です。
ナレッジ化とは
ナレッジ化とは、暗黙知を形式知に変換するプロセスです。暗黙知とは、個人の中に蓄積された、言語化しにくい知識や経験のこと。一方、形式知とは、文書やマニュアルなど言語化された知識のことです。
ナレッジ化には、以下のようなメリットがあります。
- 業務効率化
- 人材育成
- 属人化防止
- 意思決定の迅速化
- イノベーション創出
ナレッジを共有することで、同じ作業を何度も繰り返す必要がなくなり、業務効率が向上します。また、ナレッジを体系的に整理することで、新人や異動者への教育・研修が効率化されるでしょう。
さらに情報の属人化を防ぎ、組織全体の知識資産を構築できます。必要とするナレッジにすぐにアクセスできれば、意思決定の迅速化も図れるでしょう。また、蓄積されたナレッジを分析すれば、新たなアイデアやイノベーションを生み出せるはずです。
近年、企業ではナレッジマネジメントが重要視されており、ナレッジ化はその重要な柱の一つとなっています。
ナレッジ化に関連する用語解説
ナレッジ化に関する用語解説として、以下の5つを紹介します。
- ナレッジマネジメント
- ナレッジベース
- ナレッジワーカー
- ナレッジシェア
- SECIモデル
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ナレッジマネジメント
ナレッジマネジメントとは、企業や個人が持つ知識や経験などの情報をナレッジ化し、業務で効果的に活用できるよう管理することです。個人に蓄積されていた「暗黙知」を「形式知」として可視化したのち、その情報を社内で一元管理します。
ナレッジマネジメントの具体的な活動としては、以下のようなものがあります。
- ナレッジの収集・整理
- ナレッジの共有・活用
- ナレッジの創造
- ナレッジの評価
ナレッジを集め、活用できるよう整えるまでがナレッジマネジメントです。
ナレッジベース
ナレッジベースとは、組織の知識を体系的に整理して蓄積したデータベースです。マニュアル、FAQ、事例集など、さまざまな形式でナレッジを蓄積します。
ナレッジベースの構築メリットは、以下です。
- ナレッジの検索・共有が容易になる
- 必要なナレッジにすぐにアクセスできる
- ナレッジの最新化を容易にする
- ナレッジの活用状況を分析できる
データベースは、社内間の情報共有が目的のため、社外に公開しないのが前提です。そのため、ナレッジをデータベース化するシステムを導入するのが一般的といえます。専用システムであれば、情報漏洩を防ぎつつ、社員が手軽にアクセスできるので便利です。
ナレッジワーカー
ナレッジワーカーとは、専門的な知識やスキルを活かし、価値を生み出す仕事に従事する人材を指します。
具体的には、以下のような職種が挙げられます。
- 研究開発者
- コンサルタント
- エンジニア
- マーケター
- 営業職
ナレッジワーカーは、組織にとって貴重な存在であり、彼らの知識やスキルを最大限に活かせば、企業の競争力強化につながります。
ナレッジシェア
ナレッジシェアとは、ほかの社員が活用できるようにナレッジを共有することです。ナレッジ共有やナレッジコミュニケーションとも呼ばれています。
ナレッジシェアには、以下のような方法があります。
- 文書やマニュアルの共有
- ミーティングや研修での情報共有
- コミュニケーションツールを使った情報共有
もし、ナレッジが個人に依存した状態のままだと、ノウハウを持つ社員が退職/異動すると、業務が滞ってしまう危険性があります。ナレッジシェアを促進すれば、ナレッジの属人化を防ぎ、組織全体の知識レベルを向上させられます。さらには、新たなアイデアやイノベーションを生み出すきっかけにもなるでしょう。
SECIモデル
SECIモデルとは、ナレッジマネジメントの基本とされるフレームワークです。その目的は「暗黙知」から「形式知」へと変換・共有することです。
SECIモデルでは、知識創造過程を4つの段階に分類しています。それが以下のとおりです。
- S (Socialization):個人の経験やスキルを共有する「共同化」
- E (Externalization):知識を形式知化する「表出化」
- C (Combination):異なる知識を組み合わせる「結合化」
- I (Internalization):形式知を自分の知識として取り込む「内面化」
以上の4つのプロセスを繰り返しながら、ナレッジの活用を促進していきます。
ビジネスシーンでのナレッジ化の活用方法
ビジネスにおいて、ナレッジ化の活用シーンとして代表的なのは以下のふたつです。
- 新入社員入社時の教育
- 経験豊富な社員の退職・異動による引継ぎ
新入社員の入社時は、OJTや研修で経験豊富な社員が口頭で指導を行うことが多く、体系的な知識の習得が難しいという課題があります。しかし、マニュアル動画や業務手順などにナレッジ化しておけば、体系的に知識習得がしやすくなるでしょう。また、今まで属人化されていた知識をナレッジ化しておけば、業務の引継ぎや知識資産の継承もスムーズになります。
ナレッジ化を進める目的やメリット6つ
ナレッジ化を進めることで、以下の6つのような目的やメリットを得られます。
- 業務効率化
- 属人化防止
- 人材育成
- コミュニケーションの促進
- イノベーションの促進
- 知的財産の蓄積
それぞれ詳しく見ていきましょう。
業務効率化
ナレッジ共有により、同じ作業を何度も繰り返す必要がなくなり、業務効率が向上します。たとえば、マニュアルやFAQを作成すれば、社員がすぐに必要な情報にアクセスできる、情報収集にかかる時間を短縮できるなどです。
また、担当者に質問する時間、検索する時間などの手間、時間的ロスなどを省けるようになります。
属人化防止
ナレッジ化は、知識やノウハウが属人化してしまうのを防ぎます。属人化とは、特定の人に業務の知識や技術が集中し、その人しかわからない、できない状態です。その人が不在になると、業務が滞ってしまい、時間や機会のロスにつながります。
しかし、ナレッジ化でベテラン社員の経験やノウハウ、業務の知識や情報をもとにマニュアルを作成すれば、誰が担当しても同じ品質の仕事ができるようになるでしょう。また、欠勤や休職・退職などで該当者が不在の状況になっても、ナレッジ化ができていれば速やかに該当業務に対処できるようになります。
人材育成
業務工程や専門知識、ベテラン社員の経験やノウハウをナレッジ化すれば、教育ツールとして利用できます。新人や異動者に対する教育・研修が効率化され、短期間で必要な知識を身につけるのにも役立ちます。
たとえば、通常の新人教育では、必要な講師の選定や教育内容などに時間がかかってしまいがちです。しかし、ナレッジ化できていると人物を問わず同じ内容で教育が施せるため、すぐに新人教育ができるでしょう。もちろん、実践的なトレーニング資料としても活用できるため、あらゆる人材育成に対する業務負担を軽減できます。
コミュニケーションの促進
ナレッジ化されたコンテンツのおかげで社員が共通の認識を持てるため、チーム全体の知識の統一と知見獲得が同時に達成できます。また、部門間での連携もスムーズになるため、コミュニケーションが円滑になり、齟齬や誤解も生まれにくい環境を作りやすくなるメリットがあります。
その結果、メンバー同士が協力し合う風土が生まれやすくなり、創造的なアイデアを出せるようになるかもしれません。とくにイノベーションを重視するクリエイティブやコンサルティングのような業界だと、非常に役立つでしょう。ナレッジ化を推進することで、チームワーク強化にも役立ちます。
イノベーションの促進
これまで、個人やチームで埋もれていた知識などがナレッジとして表面化すると、新たなアイデアやイノベーションを生み出せるようになります。ナレッジとは、過去のプロジェクトの事例や顧客からのフィードバックから生まれるものです。それらを蓄積・分析することで、新たな商品やサービスの開発につなげられるようになるでしょう。
また、社内共有を行うことで、部門を超えて知識やノウハウを組み合わせやすくなります。結果、今までにないシナジーを生み出し、新しいアイデアや新サービスの創出に繋がるかもしれません。
知的財産の蓄積
ナレッジ化することで、これまで積み上げてきたノウハウやマニュアルが文章として蓄積できます。個々でしか価値を感じられなかったものが、ナレッジ化を進めることで社内全体の知的財産になる可能性もあるでしょう。特許なども登録しておけば、競合他社との差別化も図れます。
社員個々の経験やノウハウを文書化しておけば、人材が流出した場合も、その人が持つ知識や情報が企業からなくなることはありません。その結果、企業価値や競争力の向上にも役立ちます。ナレッジ化は、企業全体の成長と革新、競合他社との競争力向上に欠かせないものなのです。
社内のナレッジ化を実現するポイント
ナレッジ化を実現するポイントは、以下の3つです。
- マニュアルの用意
- 情報共有ツールの活用
- ナレッジ共有の可視化・運用
それぞれ詳しく見ていきましょう。
マニュアルの用意
ナレッジ化は、誰もが簡単に投稿や登録できることが大事です。そのためには、手順のマニュアルを用意することをおすすめします。ルールが複雑だと、ナレッジの投稿や蓄積がスムーズに進まないためです。
マニュアルを作成する際には、必要な情報だけを記載し、長文にならないようにします。また、図表を活用し、内容を容易に理解できるよう工夫しましょう。仕様が変更したら、すぐに手直しすることも重要です。
情報共有ツールの活用
マニュアルを作成したら、それを社内全体で共有できる仕組みが必要です。アナログ管理では活用の幅も限定されてしまうため、近年では、さまざまな情報共有ツールが開発されています。
情報共有ツールを活用することで得られるメリットは以下です。
- 場所や時間に縛られずに情報にアクセスできる
- 最新の情報を確認できる
- 検索機能を使って必要な情報を見つけられる
- 議論やコミュニケーションを促進できる
検索機能、コメント機能、チャット機能など、コミュニケーションの手段として利用できるツールもあります。いくつかのツールを比較検討し、自社の規模や目的に適したものを選びましょう。
ナレッジ共有の可視化・運用
ナレッジを共有しただけでは、意味がありません。せっかくナレッジ化しても、時間とともに誰も使わなくなるケースも少なくないのです。そのためには、共有されたナレッジが実際に活用されているかどうかを可視化し、運用していくことが重要です。
ナレッジ共有の可視化・運用には、以下のような方法があります。
- アクセス状況の分析
- アンケートの実施
- インタビューの実施
- ナレッジ共有コンテスト
よく参照されているナレッジを紹介する、役に立ったナレッジの評価制度を作るなど、ナレッジ共有のモチベーションがあがるような取り組みをしましょう。
業務のナレッジ化に役立つツール
業務のナレッジ化を進めるためには、適したツールの活用が重要です。ここでは3種類のシステムを紹介します。
- 文書管理システム
- ファイル共有システム
- グループウェア
自社に必要なツールを知り、適切なものを選びましょう。
文書管理システム
文書管理システムは、社内の文書を一元的に管理するツールです。社内で作成するさまざまな文書、情報を整理・保管・活用・廃棄するなどの機能があります。
文書管理システムのメリットは、以下です。
- 文書の検索・共有が容易になる
- 文書の最新版を常に確認できる
- 文書の改ざんを防ぐ
- 文書のバージョン管理を行う
管理はデータをただ蓄積しておくだけでなく、必要なときにすぐ閲覧できる状態を指します。日々の業務で直接使えて、情報を整理・蓄積できる機能を持つものがおすすめです。
文書管理システムについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
【関連記事】文書管理システムとは?おすすめシステムの比較とメリット・選ぶポイントを解説
ファイル共有システム
ファイル共有システムは、クラウドストレージにファイルをアップロードして、保存・共有できるサービスです。社員は、いつでもどこでも必要なファイルにアクセスできます。また、ファイルのバージョン管理やアクセス権限の設定なども可能です。
ファイル共有システムを活用するメリットは以下です。
- ファイルの検索・共有が容易になる
- 最新版のファイルを常に確認できる
- 複数のデバイスで閲覧できる
- ダウンロードができる
- 大容量のファイルを共有できる
無料で利用できるサービスもありますが、セキュリティ面を考えると不安もゼロではありません。有料でも、セキュリティ対策がしっかり施されているツールを選びましょう。クラウドを利用するため、ストレージの容量が少ない場合も業務効率化の妨げになります。契約の際には、ストレージの容量にも注意しましょう。
グループウェア
グループウェアは、社内のコミュニケーションや情報共有を支援するツールです。メールやカレンダー、掲示板やワークフローなどの機能があり、情報共有の効率化をサポートします。また、コミュニケーション活性化や業務効率化などにも役立ちます。知識や事例を体系化して蓄積していくことで、ナレッジベースとして活用できるといった面もあります。
グループウェアに関する詳細は、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】無料のおすすめグループウェア20選 | 導入メリットや比較ポイントもご紹介
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