ナレッジ共有の簡単な方法とは?社内で使えるツールの解説とおすすめ10選
企業にとって「知識」は競争力の源泉となる重要な資産です。しかし、せっかく蓄積された貴重な知識(ナレッジ)が社内に散らばり、共有されずに埋もれてしまっては意味がありません。ナレッジを活用するためには、共有できる環境を整えることが重要です。
本記事では、ナレッジ共有を簡単に行うための方法に加え、社内で使えるおすすめツールや導入手順を解説します。具体例や失敗例も紹介するので、自社のナレッジマネジメント活性化のため、ぜひ参考にしてください。
【この記事を読んでわかること】
- ナレッジ共有とは、ビジネスに役立つ知識や情報、経験や事例を社員間で共有すること
- ナレッジ共有専用のツールがあり、ツールを使うことが多い
- 業務の標準化と品質向上、業務の効率化、属人化の予防、多様な働き方への対応などのメリットがある
- ナレッジ共有を浸透させるためには、雰囲気醸成や環境整備、仕組み作りなどの施策が必要
目次
そもそもナレッジとは何か
ナレッジ(Knowledge)とは、日本語で「知識」や「知見」を意味する言葉です。一般的には、書籍などのテキストベースの資料から得られる「知識」を指しますが、ビジネスにおいては「付加価値のある知識・経験」や「事例」などの意味で使われることがあります。
ナレッジは、暗黙知と形式知のふたつから構成されます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
暗黙知
暗黙知とは、言葉で容易には説明できない、個人や組織が持つ経験や勘に基づいた知識を指します。長年の経験や試行錯誤を通して培われたもので、体系化されておらず、個人や組織内に暗黙的に存在します。具体的には以下のようなものです。
- 経験から身につけたノウハウやコツ
- 個人的なもの
- 言語化されていないもの
暗黙知の例としては、ベテラン職人による熟練の技や、顧客との良好な関係構築の秘訣などが挙げられます。暗黙知は、形式知と比べて伝承や共有が難しく、属人化しやすいというのが課題です。一方で、組織にとって独自性や競争優位性を生み出す源泉となる貴重なものでもあります。
形式知
形式知とは、文章や図表、マニュアルなど、言葉や記号を用いて明確に表現・伝達できる知識です。人に伝えられる形に整えられた情報で、書籍、論文、社内資料などが形式知の代表的な例です。
形式知は、暗黙知と比べて客観的で共有しやすく、体系化しやすいという利点があります。また、新人や異部門の人材でも比較的容易に理解でき、組織全体の知識基盤として活用できます。暗黙知とは対極に見えますが、暗黙知の漠然とした感覚的なものを言語化することで形式知に変えることが可能です。
ナレッジ共有とその方法とは
ナレッジ共有とは、ビジネス上の有益な情報・知識を社員間で共有することです。組織内に蓄積された知識や経験、ノウハウなどを関係者内で共有することで、経験がない人でも知見を得られ業務に活かせます。
ナレッジの具体的な例は以下のとおりです。
文書類 | マニュアル、報告書、企画書、営業資料 |
データ | 顧客情報、販売データ、市場調査データ |
経験・ノウハウ | ベテラン社員の技術、顧客とのやり取りの経験、問題解決のノウハウ |
アイデア | 新規事業のアイデア、改善提案 |
ナレッジ共有により、業務の標準化や品質向上が図れます。新入社員でも同じ品質の成果が期待でき、作業の無駄を省けるので非常に便利です。
現在では、社内のオンラインのネットワークを利用するのが一般的です。必要な情報にすぐアクセスできることが重要なため、共有ツールを利用する企業が少なくありません。
ナレッジのメリット
ナレッジのメリットについて、以下の5つにまとめました。
- 検索しやすくなる
- 業務の標準化や品質向上ができる
- 業務が効率化される
- 属人化を防ぐ
- 働き方の多様化に対応しやすくなる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
検索しやすくなる
ナレッジを集約して管理することで、必要な情報を見つけやすくなります。従来であれば、ベテラン社員に直接聞いたり、過去の資料を探したりする必要がありました。しかし、ナレッジ共有システムを導入すれば、キーワード検索などで簡単に必要な情報を見つけられます。
ファイル形式や書式、保存場所がバラバラだった情報を1箇所にまとめて管理でき、必要な情報を見つけやすくなります。
業務の標準化や品質向上ができる
ナレッジを共有することで、業務の標準化や品質向上が図れます。熟練社員のノウハウを共有化できるため、新人社員でも同じ品質の成果が期待できるのです。また、個人的なものだった暗黙知を言語化することで、安定的に誰もが再現できるようになります。成功した前例の共有も品質向上に有効です。ナレッジ標準化が、作業の無駄を省き、効率化につながるでしょう。
業務が効率化される
ナレッジ共有は、業務効率化に役立ちます。ベテラン社員のナレッジ共有をもとに、新人でもベテランと同じように作業を再現できるようになるでしょう。さらに共有ツールを利用すれば、自分で調べられるようになり、時間短縮にもつながるのです。質問される側も答えたり教えたりする時間がかからなくなり、自分の業務に集中できるようになります。
属人化を防ぐ
個人的な暗黙知が共有されることで、属人化の予防になります。複数のメンバーが同じ作業をするときに役立つほか、担当者が異動・退職する場合なども引継ぎがしやすくなります。また、人材流出による業務停止リスクも低減でき、個人の経験やノウハウに頼らず、誰でも同じ仕事ができるようになるでしょう。
働き方の多様化に対応しやすくなる
テレワークやリモートワークなど、働き方が多様化する現代において、ナレッジ共有はますます重要になっています。手順などが共有できれば、教える側がそばにいなくても学習が可能です。また、フレックスの推進などにも役立つでしょう。場所や時間にとらわれずに必要な情報にアクセスできることで、同じ場所にいなくても効率的に業務を回せるようになります。
おすすめナレッジ共有ツール
ここまでナレッジ共有のメリットについて解説してきました。では具体的にどのようなツールがあるのかを見てみましょう。本記事で紹介するマニュアル作成ツールは、以下の10個です。
- DocBase
- Kibela
- Stock
- NotePM
- Notion
- Qest
- Confluence
- flouu
- Cosense
- esa
それぞれの特徴を上から順に解説します。
※記載している料金は、2024年7月時点での月額・税込です。詳細な料金やプラン内容については、公式サイトをご参照ください。
DocBase
【DocBaseの特徴】
導入件数1万件以上。マークダウンとリッチテキストのどちらも利用可能。ISO27001の認証取得。堅牢なセキュリティ。圧倒的なコストパフォーマンス。 |
DocBaseは、チームのナレッジを効率的に管理・共有できる情報共有ツールです。自社の情報を一元管理・共有できるのが強みです。具体的な活用方法としては、日報や週報・議事録・マニュアル・社内Wiki・仕様書・設備や機器情報・自己紹介・企画書など多岐に渡っています。
デジタルに弱い人でも編集できるよう、マークダウンとリッチテキストのどちらにも対応しています。また、マルチデバイス対応で、スマートフォンやタブレットからでも共有・編集が可能です。
セキュリティ面では、ISO27001の認証取得や2段階認証などにより漏洩リスクに備えています。高いセキュリティ性と多くの機能を搭載しているにもかかわらず、コストパフォーマンスも他社と比べて圧倒的です。100名で利用する場合で一人あたり費用は219円となっています。30日間の無料トライアルがあるので、導入前に利用してみても良いでしょう。
【DocBaseの料金プラン】
無料トライアル | スターター | ベーシック | レギュラー | ビジネス | |
料金 | 0円 | 990円/月 | 4,950円/月 | 9,900円/月 | 21,450円/月 |
ユーザー数 | 無制限 | 3人 | 10人 | 30人 | 100人 |
ストレージ | 無制限 | 3GB | 10GB | 30GB | 100GB |
Kibela
(引用:Kibela)
【Kibelaの特徴】
さまざまな資料から簡単にインポート。リアルタイム共同編集機能、オリジナル辞書機能を搭載。プランによって異なる無料トライアル期間。 |
Kibelaは、チーム内のナレッジ共有と情報管理を自律化させるのを目的にリリースされた、クラウド型ツールです。情報蓄積と構造化が簡単にでき、業務マニュアル・仕様書・設計書の作成以外に議事録・機密情報・Tips情報共有にも長けています。
画像や動画をコピー&ペーストで簡単に埋め込めるだけでなく、Excel、CSV、スプレッドシートもコピー&ペーストで表埋め込みが可能です。また、複数条件に対応した高度な検索にも対応しています。5名まで無料で使える「コミュニティープラン」でお試しができます。
【Kibelaの料金プラン】
コミュニティープラン | スタンダードプラン | エンタープライズプラン | |
料金 | 0円 | 550円/月※1ユーザーあたり | 1,650円/月※1ユーザーあたり |
ユーザー数 | 5人まで | 6人~ | 6人~ |
ストレージ | 1GB/人 | 5GB/人 | 20GB/人 |
Stock
(引用:Stock)
【Stockの特徴】
シンプルな操作性。メンバー同士でメッセージのやり取りが可能。スマホ・タブレットでの利用可。 |
Stock(ストック)は、小~中規模までのチームに適しているツールです。ファイルをブラウザ上でプレビューできるため、いちいちダウンロードする必要がありません。chatworkやslackなどの外部ツールとも連携できるうえ、ツール内でメンバー同士のやり取りが可能です。面談記録・商談記録などプロジェクト管理や事例紹介に強みがあります。
使いやすさに重点を置いたツールで、スマートフォンアプリとタブレットアプリが用意されています。オフラインモードでも編集でき、教育機関用やNPO・学校法人のPTAなどを対象にしたプランも用意されています。
【Stockの料金プラン】
フリープラン | ビジネスプラン | エンタープライズプラン | |
料金 | 0円 | 550円/月※1ユーザーあたり | 1,100円/月※1ユーザーあたり |
ノート数 | 20ノートまで | 無制限 | 無制限 |
ストレージ | 1GB | 10GB | 20GB |
NotePM
(引用:NotePM)
【NotePMの特徴】
社内Wikiや社内FAQとして活用可能。高機能エディタとテンプレートでフォーマットを標準化。高いセキュリティ性で医療機関や金融機関で採用。 |
NotePMは、社内の情報共有やナレッジ管理を効率的に行えるツールです。情報の一括集約と共有に強みを持っており、マニュアル作成や社内wikiの作成用として活用できます。強力な検索機能を備えており、キーワードを入力すれば、Word・Excel・PowerPoint・PDFの中身でも全文検索が可能です。
ISMS認証を取得しており、銀行や大学でも導入している高度なセキュリティを供えています。また、コメントやいいね機能を搭載しており、SNSのような使い方ができるのも特徴です。導入前に、無料トライアルで試してみても良いでしょう。
【NotePMの料金プラン】
プラン8 | プラン15 | プラン25 | プラン50 | プラン100 | プラン200~ | |
料金 | 5,280円/月 | 9,900円/月 | 16,500円/月 | 33,000円/月 | 66,000円/月 | 132,000円/月 |
ユーザー数 | 8人まで | 15人まで | 25人まで | 50人まで | 100人まで | 200人まで |
ストレージ | 80GB | 150GB | 250GB | 500GB | 1TB | 2TB |
Notion
(引用:Notion)
【Notionの特徴】
多くのシーンで活用できるオールインワンツール。ページを自由に構築。リアルタイムで情報共有。 |
Notionは、個人から大企業までが利用する情報共有ツールです。50以上の国で利用され、英語・日本語をはじめとする主要な言語に対応している国際的なサービスでもあります。画像やチェックボックス、埋め込みなど、自由にページを構築でき、すべてをドラッグ&ドロップで編集可能です。
豊富なテンプレートがあり、議事録・日報・タスクリストなどニーズに合わせて使い分けられます。またパソコン、スマートフォン、タブレットとマルチデバイス対応となっており、出先でも簡単にアクセス可能です。オフラインモードを使用すれば、インターネット接続がない場所でも編集できます。データベースとして利用できるだけでなく、Webページとして公開できる機能もリリースされました。
【Notionの料金プラン】
フリー | プラス | ビジネス | |
料金 | 無料 | 1,650円/月/メンバー | 2,500円/月/メンバー |
人数 | 10人までゲストを招待 | 100人まで | 250人まで |
履歴 | 7日間 | 30日間 | 90日間 |
Qast
(引用:Qast)
【Qastの特徴】
シンプルな画面設計で誰でも直感的に操作可能。活用状況を定量的に観測・分析専用のナレッジコンサルタントが伴走。 |
Qastは、ナレッジマネジメントを実践する現場の声をもとに開発された情報共有ツールです。導入の際には専用コンサルタントが伴走してくれるため、ツールを導入したけれど活用されないといった事態を避けられます。誰でも使えるシンプルな画面と活用を促進する独自の仕組みによって、職種や年齢層に関係なく誰でも操作可能です。部署や拠点をまたいだ全社利用にも最適で、大規模利用にも対応しています。
QastAIでは、PDFやWord、Excelなどの既存ファイルをQastにドラッグ&ドロップするだけで、構造化したナレッジに変換した投稿が可能です。すでに蓄積されている自社ナレッジをAIが学習し「こましりchat」が自動回答してくれます。回答が不十分な場合は、詳しい人にその場で質問してナレッジを引き出せるので、最新性や正確性も担保できます。
【Qastの料金プラン】
スタンダード | ビジネス | プロフェッショナル | プレミアム | |
料金 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 |
人数 | 20名~ | 20名~ | 200人まで | 200名まで |
1ファイル容量 | 50MB | 250MB | 250MB | 250MB |
※コンサルタントはビジネスプラン以上から
※費用は初期導入費用+月額費用(資料請求&お問い合わせにて)
Confluence
(引用:Confluence)
【Confluenceの特徴】
ホワイトボード機能でブレストが可能。AI搭載でドキュメントの要約が可能。マーケティング計画表のテンプレート搭載。 |
Confluenceは、チームでの情報共有を効率化するためのナレッジ共有ツールです。とくにプロジェクト管理やナレッジベースの構築に優れており、IT業界やクリエイティブ業界で広く利用されています。
豊富なテンプレートにより、アイデア出しや戦略計画の作成も簡単にでき、作成したものがそのまま共有されます。AIがブログ投稿や長文ドキュメントを要約してくれるため、作業工程を簡略化してくれるでしょう。
【Confluenceの料金プラン】
Free | Standard | Premium | Enterprise | |
料金 | 0円 | 645円/月※1ユーザーあたり | 1,174円/月※1ユーザーあたり | 要問い合わせ |
ユーザー数 | 無制限 | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
ストレージ | 無制限 | 250GB | 無制限 | 無制限 |
flouu
(引用:flouu)
【flouuの特徴】
AWSを利用した高いセキュリティ。ISO27001の認証取得。さまざまなサービスとの連携が可能。 |
flouu(フロー)は、企業内のナレッジ共有から社内Wikiまで作成できるITツールです。「組織のDXを加速させる」というキャッチコピーで、ナレッジ共有にまつわるさまざまな機能を有しています。年間を通じて最もお問い合わせが多かった「ITトレンド年間ランキング」で2年連続1位も獲得しています。
セキュリティ対策に力を入れており、毎日バックアップする機能によりデータ消失のリスクに対応しているのも評価すべきポイントです。ほかにもISO27001の認証取得、AWS利用、二段階認証、データ暗号化などセキュリティ体制は万全です。
【flouuの料金プラン】
基本料金 | |
料金 | 660円/月※1ユーザーあたり |
ユーザー数 | 無制限 |
ストレージ | 10GB |
※別途「セキュリティオプション」「OCRオプション」を追加可能
Cosense
(引用:Cosense)
【Cosenceの特徴】
高い検索性。書きやすさ・読みやすさを追求したUI。チャット感覚でのコミュニケーション。 |
Cosenceは、株式会社Helpfeel(ヘルプフィール)が提供するドキュメント共有ツールです。2024年5月にサービス名がScrapboxからCosense(コセンス)に変更されました。社会問題である情報格差の解消に向けて「ナレッジによって人や組織を豊かにする」をコアバリューとしており、家族、学校の授業や勉強会、趣味のグループやNPOなどは無料で利用可能です。
ログイン方法には、Google認証の他にSAML認証・AzureAD認証・メール認証があり、大変便利です。10万ページ以上の膨大なドキュメント量であっても、高い検索性を誇り、専門用語に詳しくない新人でも自分の言葉で必要な情報を見つけ出せます。会話やメモがナレッジとして共有できるので、確実にドキュメント共有文化が形成されるでしょう。
【Cosenceの料金プラン】
基本料金 | |
料金 | 個人:無料ビジネス:1,100円/1ユーザー |
ユーザー数 | 無制限 |
ストレージ | 10GB |
esa
(引用:esa)
【esaツールの特徴】
同時編集エディター。各種サービスとの連携。マークダウンと豊富な入力補助。 |
esaは、合同会社esa(エサ)が提供するドキュメント共有ツールです。チームで情報を共有・編集でき、エンジニアを中心に多くのユーザーに支持されています。最大の特徴として、書いている途中でも記事を共有できるWIP機能がある点です。記事を公開する前の下書き段階でチームメンバーと共有し、意見交換や編集ができます。
エディターは、マークダウン記法に対応しており、シンプルで使いやすいのが特徴です。記事を分類するためのカテゴリ機能が搭載されており、APIやSlackなどの外部ツールとも連携できます。外部公開機能を利用すると社外の人にも共有可能です。
【esaの料金プラン】
基本料金 | |
料金 | 500円/1ユーザー/月 |
ユーザー数 | 無制限 |
ストレージ | 無制限 |
共有するナレッジの具体例
社内に蓄積された知見・情報・スキル・ノウハウなどがナレッジですが、共有すべきナレッジの具体例について、以下の5つにまとめました。
- 社内の成功事例
- 社内の失敗事例、事故事例
- 専門的知識、技術
- 知的資産
- 顧客情報、提携先の情報
それぞれ詳しく見ていきましょう。
社内の成功事例
成功事例は、状況の説明や対応も一緒に共有すると将来的に同じような状況になったときの助けとなります。成功事例は、失敗事例に比べ理由・要因が考察されにくいため、再現のナレッジ蓄積は貴重です。
共有すべき成功事例について以下のようなものがあります。
- 新製品開発
- 顧客満足度向上
- コスト削減
- 問題解決事例
- 目標達成事例
- 業務効率化
共有する際は、具体的な数字やデータも重要です。専門用語は避け、わかりやすい文章で説明しましょう。図表や写真などがあると視覚的に理解しやすいのでおすすめです。
社内の失敗事例、事故事例
失敗事例や事故事例は、再発防止のために重要です。事例から得られる教訓は、業務改善のヒントになります。そのために、具体的な内容、原因、対処などを共有しましょう。部署内で共有するのはもちろん、内容によっては他部署でも役立つはずです。
具体的な事例として以下のようなものがあります。
- リスク管理の失敗
- コミュニケーションの失敗
- コンプライアンス違反
共有する際には、責任の追及ではなく客観的な視点からの分析が重要です。また、失敗事例からの教訓と具体的な改善策、再発防止策を提示するとよいでしょう。
専門的知識、技術
経験豊富な社員のノウハウやコツを形式知化することで作業の効率や品質の向上につながります。組織内の専門家や技術者が持つ専門的知識や技術を共有すれば、組織全体の知識基盤を強化し、イノベーション促進に役立つでしょう。
専門的知識や技術には、以下のようなものが含まれます。
- 特定の業界に関する専門知識や情報
- 製品やサービスに関する深い知識
- 研究開発に関する知識
事例や資料などがあると、専門外の社員が再現する際に助けとなります。専門知識のナレッジ共有は、基本的な作業のマニュアル化にも役立つでしょう。
知的資産
特許や商標・著作権などの知的資産の共有は、組織の競争優位性を維持し、収益性向上に役立ちます。知的資産には、以下のようなものが含まれます。
- 特許
- 商標
- 著作権
これまでは財務諸表に計上される有形資産(土地、建物、設備など)が重視されてきました。しかし、近年では目に見えない知的資産が企業の競争力に大きく影響を与えているため、非常に重要なナレッジとなるでしょう。
顧客情報、提携先の情報
顧客情報や提携先の情報は、顧客との良好な関係を築き、ビジネスチャンスを創出するために重要です。共有する顧客情報や提携先の情報には、以下のようなものが含まれます。
- 顧客情報( 顧客の属性、ニーズ、購買履歴など)
- 提携先の情報( 提携先の事業内容、強み、連絡先など)
現場でしかわからない、かつ販売記録には残らないような注意点やニーズなどが重宝します。ただし、顧客情報や提携先の情報を共有する際には、個人情報保護法を遵守し、情報漏洩には注意しましょう。
ナレッジ共有不足によって起こる問題とは?
ナレッジ共有不足によって起こる問題についてまとめました。
- 業務の属人化
- 生産性の低下
- 社員の関係性の悪化
それぞれ詳しく見ていきましょう。
業務の属人化
業務の属人化とは、具体的な作業手順やノウハウが個人にとどまっている状態を指します。ナレッジ共有が不足すると、特定の個人だけが特定の業務に関する知識やスキルを持ち、その個人に業務が依存する状態となってしまいます。
属人化が進むと、特定の個人が病気や休暇などで不在となれば、業務がストップしてしまう事態にも陥るでしょう。さらに、その人が退職した場合、業務の停滞や品質の低下にもつながります。
生産性の低下
ナレッジ共有の不足は、生産率の低下につながります。ナレッジ共有がなければ、業務に必要な知識や情報を得られず、作業完了までに時間がかかってしまうためです。また、同じ失敗を繰り返したり、非効率的な方法で作業したりなど悪循環に陥ってしまうでしょう。
社員の関係性の悪化
情報が共有されていないと、人により知っている情報の量の差が生まれてしまいます。知らされていない、知らせたのに確認していないなどがチーム内で起こり、不信感や不満につながるためです。他部署の業務内容が見えないと、勝手な憶測や不満が起こりやすいのも事実です。また、必要な知識や情報を持っている社員がそれを共有しようとせず、自分だけが情報を独占しようとするケースもあります。このような状況は、社員同士の信頼関係を損ない、チームワークの悪化につながるでしょう。
ナレッジ共有ツールの導入手順
ナレッジ共有には専門ツールを利用するのがおすすめです。共有ツールがあれば、組織内の知識や情報を効率的に共有し、業務の生産性アップや社員のモチベーション向上に役立つでしょう。
その導入手順を以下の5ステップで紹介します。
- 担当者を決める
- 整理すべきナレッジや目標を明確化する
- 目的に合ったツールを選定する
- 少人数で試験的にスタートする
- 範囲を拡大し、PDCAでブラッシュアップさせる
順に詳しく見ていきましょう。
STEP①担当者を決める
まず、ナレッジ共有ツールの導入を推進する担当者を決めましょう。担当者は、導入後の運用や社員への教育、ツールのメンテナンスなどを担う重要な役割を担います。そのため、以下の点を考慮して選びましょう。
- ナレッジ共有の重要性を理解している人
- 社内の情報に通じている人
- コミュニケーション能力が高い人
ナレッジ共有は、自発的に投稿してもらうようになるまでが大変です。日常的な投稿を浸透させる仕組み作りや運用ルール作りの段階から、情熱を持って取り組んでくれる人を選びましょう。
STEP②整理すべきナレッジや目的を明確化する
次に、共有すべきナレッジの種類と、ナレッジ共有ツール導入の目的を明確化しましょう。目的が明確なほど、仕組み作りや促進の施策も決めやすいものです。
ナレッジ共有ツールの導入目的としては、以下のようなものが挙げられます。
- 業務の属人化防止
- 効率化の促進
- 情報共有の促進
- 意思決定の迅速化
- 社員のスキルアップ
- アイデア交換の促進
- イノベーションの創出
整理すべきナレッジの種類としては、上述したように社内の成功事例・失敗事例・専門知識・知的資産・顧客情報などです。これらを整理・分類し、取り組みやすいよう整えていきましょう。
STEP③目的に合ったツールを選定する
STEP②を踏まえ、目的に合ったナレッジ共有ツールを選びましょう。目的によって、必要となる機能は異なります。
ナレッジ共有ツールには、以下のような種類があります。
文書共有ツール | WordやExcelなどの文書ファイルを共有 |
Wikiツール | 社員同士が自由に情報を編集・閲覧できるツール |
FAQツール | よくある質問とその回答を共有するツール |
Q&Aツール | 社員同士が質問・回答を投稿できるツール |
SNSツール | 社員同士がコミュニケーションを取り、情報を共有するツール |
目的に合ったツールを利用しないと、かえって非効率です。無料お試しが利用できるツールもあるので、候補を何種類か挙げて試してみましょう。
STEP④少人数で試験的にスタートする
いきなり全社に導入するのではなく、まずは少人数の部署で試験的に導入してみましょう。実際に使いながら、ツールの使い勝手や運用方法、社員の反応などを検証していきます。使ってみないとわからないことも多く、そもそも必要かなども検討しましょう。問題点があれば、STEP②やSTEP③に戻って再検討できます。
STEP⑤範囲を拡大し、PDCAでブラッシュアップさせる
試験導入で問題がなければ、徐々に導入範囲を拡大していきます。効果的な運用方法や方向性が定まったら、範囲を拡大して導入していきましょう。導入後は、定期的に利用状況や社員の満足度などを調査し、必要に応じてツールの設定や運用方法を改善していきます。
また、ナレッジ共有ツールの導入は単体で行うのではなく、他の施策との組み合わせも重要です。たとえば、ナレッジ共有の重要性を啓蒙する研修を実施したり、ナレッジ共有に関する表彰制度を設けたりなどです。このようにPDCAを回しながら、ナレッジ共有の文化醸成に取り組んでしていきましょう。
ナレッジ共有の失敗例
せっかく共有ツールを導入しても、活用できなければ意味がありません。よくあるナレッジ共有の失敗例として、以下の4つを紹介します。
- ナレッジの投稿・更新がされない
- ナレッジの投稿が難しい
- ナレッジが検索しにくい
- 従来のツールを使い続けてしまう
失敗例とともに原因や対策についても解説します。
ナレッジの投稿・更新がされない
せっかくツールを導入しても、誰もナレッジを投稿・更新しなければ、宝の持ち腐れになってしまいます。原因として、次の理由が考えられます。
- 忙しい
- 更新の負担が大きい
- 投稿の重要性が伝わっていない
- メリットが実感できない など
対策としては、ナレッジ共有の重要性を経営層や管理者が率先して伝え、社員の意識を高めることです。ほかにも、投稿や更新に必要なフォーマットやテンプレートを用意して負担を軽減する、投稿・更新のための時間を確保するなども重要です。担当者は、投稿のメリットを社員に周知してもらい、モチベーションを高める努力をしましょう。
ナレッジの投稿が難しい
ナレッジ共有ツールによっては、投稿方法が複雑だったり、使いにくいと感じたりすることがあります。すると社員は、ナレッジの投稿方法がわからず、投稿自体を諦めてしまうのです。反対に、各ルールがあいまいで、どのように書けばいいかわからない場合も、投稿をまとめられず諦めてしまうでしょう。
対策としては、ツールの使用方法についての研修を実施する、投稿しやすいテンプレートを用意するなどです。また、投稿内容へのレビュー制度を設けると、投稿の質を高めていけます。
ナレッジが検索しにくい
ナレッジ共有ツールによっては、検索機能が使いにくかったり、目的のナレッジを見つけにくかったりするものがあります。また、ナレッジが集まっても、知りたい答えに到達しにくければ使われなくなってしまうでしょう。そのほか、集約しきれず保存されている場所が複数ある、ツールを使っていないため保存形式がばらばらなどの場合も検索しにくいはずです。
対策としては、適切なカテゴリ分類をし、目的のナレッジを見つけるための導線をわかりやすいものにする、使いやすい検索機能を提供するなどです。
従来のツールを使い続けてしまう
ツール導入の移行期に陥りやすい問題として、従来のツールを使い続けてしまうことがあります。つい、使い慣れたものを使い続けてしまうケースが少なくありません。ツール導入の目的が明確でないと、使い分けの基準があいまいでどちらを使ったら良いか、わからなくなる場合もあるでしょう。
対策として、従来のツールとの連携を検討する一方、新しいツールのメリットを積極的にアピールすることです。
ナレッジ共有を浸透・習慣化させる方法
せっかくナレッジ共有ツールを導入しても、社員が積極的に活用しなければ意味がありません。そこで、ナレッジ共有を浸透・習慣化させる方法を6つ紹介します。
- 導入の目的とメリットの共有
- 投稿へのインセンティブ
- 検索しやすい投稿ルール作り
- まず投稿してからブラッシュアップする文化作り
- ほかの情報ツールとの使い分け、あるいは切り替え
- 担当者や経営陣の積極的な活用
それぞれ詳しく見ていきましょう。
導入の目的とメリットの共有
まず、ナレッジ共有ツールを導入する目的とメリットを明確にし、全社に周知しましょう。あいまいさがなくなり、ほかのツールとの使い分けなどで迷わなくなります。また、経営層や管理者が率先して、ナレッジ共有ツールを使用する重要性を伝えることも重要です。積極的な働きかけで、社員の意識を高めていきましょう。
投稿へのインセンティブ
社員が積極的にナレッジを投稿・更新するように、投稿へのインセンティブを用意するのも有効です。具体的なインセンティブには下記のようなものがあります。
- ポイント制度:ナレッジを投稿・更新するたびにポイントを付与
- 表彰制度:ナレッジ投稿・更新の優秀者を表彰
ポイント制では、一定数のポイントを貯めると景品と交換できる制度を設けます。また、表彰制度では、ナレッジ共有に積極的に貢献している社員を評価し、キャリアアップに繋げるなどです。インセンティブ制度を設けることで、社員のモチベーションを高め、ナレッジ共有を活性化できます。
検索しやすい投稿ルール作り
ナレッジ共有ツールを効果的に活用するためには、検索しやすい投稿ルール作りが重要です。そのための工夫としては、以下のようなものがあります。
テンプレート化 | タグやタイトルのルール化 |
ガイドライン作り | ルールに従って投稿すればOK |
カテゴリ分け | ナレッジの分類 |
ルールを設けることで、社員が投稿したナレッジを他の社員が効率的に検索・活用できるようになります。ただしルールが細かすぎると逆に投稿しづらくなるため、ルールはシンプルなものにしましょう。
まず投稿してからブラッシュアップする文化作り
完璧なナレッジを投稿しようとするあまり、投稿を躊躇してしまう社員がいるかもしれません。そこで「まず投稿してからブラッシュアップしていく」文化を作りましょう。ポイントとしては、投稿のハードルを下げ、投稿数を増やすような体制作りです。
投稿を促すためには、草稿機能の活用やレビュー制度の設置などがあります。また、質問しやすい環境を作り、社員が気軽にナレッジを投稿してもらえるようにしましょう。
ほかの情報ツールとの使い分け、あるいは切り替え
社内では、メールやチャットツールなど、さまざまな情報共有ツールが利用されているケースが多いものです。ナレッジ共有ツールを導入する際には、他の情報ツールとの使い分け、あるいは切り替えを検討する必要があります。
ナレッジ共有ツールは、体系的な知識を共有するのに適しており、メールやチャットツールは、ちょっとした情報共有やコミュニケーションに適しています。ほかの情報ツールや共有方法がある場合、使い分けの基準を明確にしましょう。
過渡期だからと両方使える期間を設けると、かえって不親切な場合もあります。切り替える場合は、他の情報ツールで共有しているナレッジを徐々にナレッジ共有ツールに移行していくようにしましょう。
担当者や経営陣の積極的な活用
ナレッジ共有ツールを成功させるためには、担当者や経営陣が率先して活用することです。担当者が積極的に投稿すれば、それがサンプルとなり、ほかの社員も投稿しやすくなるでしょう。
また、経営陣は、ナレッジ共有ツールの重要性を全社に周知し、積極的に活用する雰囲気作りに貢献しましょう。経営陣が積極的に投稿することで、社員も投稿しやすくなります。
ナレッジ共有ならDocBaseを活用しよう
ナレッジ共有は、さまざまなメリットがあり、業務の効率化や品質向上に有効です。ナレッジ共有ツールを導入すれば、社内にある情報を整理して、誰でもアクセスできるデータベースを構築できるでしょう。
情報共有のツールをお探しなら、DocBaseがおすすめです。ナレッジ共有はもちろん、マニュアルや社内wiki、日報や議事録、企画書などさまざまな形で活用できます。すでに1万社以上の導入実績があり、その信頼性と実績には定評があります。
社内のナレッジ共有ツールを検討している担当者様は、資料請求や無料お試しをご利用いただけます。ご興味のある方は、ぜひご検討ください。